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IT/イット “それ”が見えたら、終わり。のmのレビュー・感想・評価

4.9
ホラーではなくジュブナイルものとして完璧に完成されている事に感動した。
やろうと思えばいくらでもホラーとして本気で怖くできる所を程々で抑えて、あくまで子供達にとっての一夏の通過儀礼と成長の物語としてエモーショナルで美しい作品に仕上げている。正直ここまでエモい作品だとは思いもしなかったので嬉しい驚き。

通過儀礼の集大成としてのクライマックスの子供達とペニーワイズの闘いには大いに興奮。リッチーのあの台詞の熱さ!

全員主役を張れるくらい個性豊かなルーザーズクラブの子供達が皆活き活きと親身に描かれていて、彼らの事をすっかり好きになってしまい、美しいラストシーンでは思わず涙した。
演じる子役達も皆素晴らしいが、中でもTPO無視で常に軽口とスラングを吐き続ける瓶底眼鏡のリッチーが出色。彼のコメディ演技は巧みで、流石あの『ストレンジャー・シングス』で主役を張っている男。そしてこういう常にふざけ倒している奴が本気でビビると深刻さが増すし、彼が本気で熱くなる時こそ観客も本気で熱くなるという事を作り手はよく分かっている。
紅一点のビバリーもすこぶる良くて、複雑で強い内面とチャーミングさが印象的。

ジェシカ・チャスティン主演の隠れた傑作ホラー「MAMA」のアンディ・ムスキエティ監督の手腕は相変わらずのアッパー系なホラー描写やクリーチャー造形のこだわり(絵の崩れた顔の女はシルエットがMAMAそっくりだし)だけでなく、地下空間の幻想的なビジュアル、そして子供達の心情と交流を豊かに描く所でもしかと活きている。


製作開始当初の予定では監督はケイリー・ジョージ・フクナガでウィル・ポールターがペニーワイズ役だったが、残念ながら両者共に降板。脚本にクレジットが残っているようにケイリー版のエッセンスも残っているらしい。オーディションで審査員を震え上がらせたというウィル版ペニーワイズも観てみたかったが、ドラマ版の違う意味で子供を食いそうだった生々しいおっさんペニーワイズとも違う若くて元気な今回のビル・スカルスガルド版ペニーワイズも愉しそうな怪演でこれはこれで良い。

今回の過去編単独で終わっても良いくらいの素晴らしい出来栄えだったが、そこは現在編もあってこその「IT」。2019年公開の新作を愉しみに待ちたい。


子役達が続編で自分の未来を演じる役者は誰が良いかを思い思いに話したインタビューで、ビバリー役の子役はジェシカ・チャスティンを指名。それを受けたジェシカも前向きなコメントを発表した。ジェシカ姐さん主演が実現する事を期待してます。
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