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クワイ河に虹をかけた男のundoのレビュー・感想・評価

クワイ河に虹をかけた男(2016年製作の映画)
3.9
心に虹を。

みなさま、お久しぶりです。
近々、仕事環境が大きく変わることになり、その準備に日々追われておりますが、徐々に映画館に行ける時間もとれるようになってきたのでレビュー活動を再開致します。

先週末、久しぶりに完全オフがとれたので、今まで映画鑑賞を我慢していた反動で、2日で6本観てきました(笑)少しずつレビューを書いていきます。

本作は、KSB瀬戸内海放送が制作したドキュメンタリー。
旧日本軍の通訳としてタイへ従軍していた永瀬隆さんの、戦後の贖罪の姿を描く。

政治的な思想は人それぞれだけど、第二次世界大戦中の旧日本軍の行動については、いまだに様々な議論を耳にする。
個人的には、当時のことを知る人が少なくなるにつれて、その時代が持っていた感情なども読みとりづらくなっていき、今の時代の人間に都合良く解釈され、利用されるだけなのだから、どこかで線を引くしかないと思う。美化も卑下も不要。
現代の人間には、信頼できる当時の記録を心に留め、教訓とし、その上で前に進むことしかできないのだから。

だけど、当事者の方はもちろん別で、人生を大きく狂わされた方達が一生をかけて恨みや怒りを忘れない、ということは仕方のないことだと思う。そんな人たちに対しては、「前に進まなきゃ」とは気軽には言えない…。

本作の主役、永瀬隆さんは実際に戦場で目の当たりにした旧日本軍の捕虜に対する蛮行に対して、戦後の日本政府の反対にも関わらず、個人での贖罪に取り組んだ。
当時の関係者が行った行動というところに価値があり、映像を通して知ることのできるその真摯な姿勢には一種の神々しさすら感じる。
同時に、永瀬さんの語る当時の凄惨な状況は、同じ日本人としてショックを受ける。ガリガリに痩せた捕虜の映像も見れるのだけど、永瀬さんの話を裏付けるには十分すぎる生々しい映像。
現代の国際感覚では決して容認されない、当時の日本軍のエゴや戦線の弱さが容易に読み取れる。

永瀬さんは、戦後タイに135回も訪れ、様々なアプローチで贖罪を行う。現地のタイ人に対してだけではなく、当時のイギリス人捕虜にも和解の機会を得るために接触する。
現地を訪れた、かつての捕虜達に友好ムードはなく、その恨みと怒りをないまぜにしたような鋭い眼光には、同じ日本人としてショックを受ける(2回目)。

和解と贖罪の巡礼を続ける永瀬さんの長い闘いは終わりのないマラソンのよう。徐々に体力が衰えながらも、旅をやめようとしない永瀬さんの姿に、一生をかけて取り組み続けることの尊さを教えて頂いたような気がした。

そして、この映画にはもう1つ見どころがある。
『ふたりの桃源郷』
『人生フルーツ』
などに通じるテーマなのだけど、こちらも気高い。人生、一度きり。そして心に虹はかかった。
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