一人旅

サバービコン 仮面を被った街の一人旅のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ジョージ・クルーニー監督作。

ジョエル&イーサン・コーエン兄弟が書いた脚本をジョージ・クルーニーが映像化した泥々のホームサスペンスで、クルーニー組のマット・デイモンが既存イメージを覆す狂った父親を妙演している他、ジュリアン・ムーアが対照的役柄の姉妹を一人二役で演じています。

1950年代、白人キリスト教徒のファミリーが全米から移り住んでくる話題沸騰の新興住宅街:「サバービコン」を舞台に、とある家族に渦巻く欲望と一連の殺人事件の顛末と、白人ばかりの住宅街に引っ越してきた黒人家族に対する白人住民の差別&攻撃を並行的に描き出しています。

白人キリスト教徒の欺瞞と悪性をブラックユーモア万点に炙り出した社会風刺性の濃い作品で、真っ白なサバービコンに一滴の黒(黒人家族)が混じり込んだことに対する白人住民の過剰な反応―偏見、差別、デモ、襲撃…が描かれていますが、お話の軸となるのは白人家族の一人息子:ニッキーの視点により暴き出される“理想的に見えた家族の本当の正体”にあります。ニッキーは会社員の父親と足の不自由な母親、彼女の伯母の4人で平和に暮らしていたが、ある日強盗に襲撃され母親だけが運悪く殺されてしまう。悲嘆に暮れるニッキー。しかし事件の裏側には家族同士の愛憎渦巻く陰謀が隠されていた…というホームサスペンスが主軸になっていて、一つの殺人が連鎖的に複数の殺人を引き起こしていく様子が滑稽なキャラクター描写と共に活写されています。その可笑しな殺人サスペンスは、実際にメガホンを取ったのがジョージ・クルーニーであっても、画面から独特のコーエン臭がぷんぷん漂っています。“罪を犯した人間の滑稽”は元々コーエン兄弟の得意技でもあります。

自分達を“正統なアメリカ人”として潜在的に認識しながらも、表向きは善良な市民を装ってきた白人キリスト教徒の自己欺瞞と本心―異人種・異民族に対する敵意と優越を炙り出した異色のホームサスペンスで、“自分達は常に正しく、相手に非がある”―独善的な彼らの心に巣食う歪んだ欲望の激烈な表出と自己壊滅がシニカルな笑いを生んでいます。
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