シランガナ

ハクソー・リッジのシランガナのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
3.3
メル・ギブソン監督復帰作であり、ようやく彼も作品撮るのを許されるようになったかと、その点がまず感慨深い。
「パッション」「アポカリプト」と人間の本質をえぐる、ショッキングな映像の作品のファンであったため、色々と問題を起こして干されていたのは残念でならなかったし、僕にとってはとても待ち遠しかった作品と言える。

本作は沖縄戦を描いているが、得意のグロ映像は変わらず、戦闘シーンでは目を背けたくなるような描写が続く。いわゆるポスト・プライベートライアンな戦争映画であった。

戦闘シーンはとにかくすさまじく、まあ人が死にまくる。しかしながら死ぬのは日本兵だけでなく米兵も同様で、従来の太平洋戦争を描いた多くの作品〜「ウインドトーカーズ」「ザ・パシフィック」〜などとは違い、日本兵がザコ、紙くずとしてではなく、戦う価値のある存在として描かれていたのは好感が持てた。

物語としては、描きたいポイントがズレてしまっていたかなあと思わざるを得ない。幼少期・青年期・兵役とあるが、恋愛や結婚を描くことで何となく主人公の信念がぼやけてしまっているような気がした。まあそこはアメリカ映画だし、対異性との愛を描くのは必然ではあるんだろうけど。

あとは、父親との葛藤の部分もなんだか中途半端。彼が良心的兵役拒否者となる敬虔なクリスチャンとなっていった、ならざるを得なかった過程をもっと深く描いてもいいのではないかと思ったし、それに至るには父親の存在を掘り下げないと説得力が足りないように感じた。

また、「沈黙」に続きアンドリュー・ガーフィールドは神との関係に悩む青年を演じており、さすがに似たような映画出すぎだし、演じ分けもできているようないないようなで、公開時期が被ったのは偶然なんだろうけど、こちらとしては「沈黙」第2章を見せられているようでなんだか不思議な気持ちになった。
繊細な、思い悩む系の役を長いこと演じているけど、また違った役を演じて欲しいと思う。

プライベートライアン的な、戦争を描く映画ではなく、戦争を通した主人公の神との対話だったり葛藤を描く作品なので、戦争映画を期待していくと少し片手落ちかも。でも、戦闘シーンは本当に見応えがあるのでスクリーンで見れて良かったと思いました。
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