わたがし

アリータ:バトル・エンジェルのわたがしのレビュー・感想・評価

5.0
in IMAX3D
 キモいキモいと言われ続けてきたパフォーマンス・キャプチャーキャラを「もうキモいとは言わせねえ!!」と言わんばかりに接写しまくる感じが良かった。眼も生き生きしてるし(なんなら生身の人間よりも生命感がある)、肌も触れそうなぐらい生っぽい。途中で水の中に潜るシーンは若干「あ~」って感じがするけど、水中パフォーマンス・キャプチャーはアバター2撮る準備として作られたばっかの新技術らしくて、そういう新技術を即投入する感じがもういくらロドリゲスが監督って言ったってキャメロンの映画なんだって思わされる。
 ストーリーの流れとかめっちゃキャメロンキャメロンしてるんだけど、たぶんキャメロンという作家は「将来的に起こりうること」としてSFを描く人なのに対し、ロドリゲスという人は完全にファンタジーとしてSFを描いてるんじゃないかと思った。だからキャメロンが書いた(いい意味で)説教臭いシーンも、キャメロンが撮れば恐らくもっと暑苦しくて切実なものになってただろうけど、そういう問題意識のあまりないロドリゲスが撮ってるから単純に面白くないなあ~ってなる。
 逆にモーターボールみたいにどちらかと言うと能天気なシーンは、ロドリゲスが撮ったからこそのぎゅいんぎゅいんの迫力があったし、もしこれをキャメロンが撮ったとしたら風格はあるけどテンションはあがりきらないシーンになったんだろうなって。
 3D大好きマンなので、久しぶりにこういうCGゴテゴテのIMAX3D大作(しかも3D大王キャメロンが関わってる)が観れる!!ってことで3D演出は特に楽しみにしてたんだけど、まずファーストカットから「え~」って声に出そうになるぐらい微妙だったなあ。業界全体的に3D映画のクオリティがあがり切った中で、3D信者のこの二人ならきっと新しい3Dを見せてくれるだろうと思ってたけど、ただクオリティ高いだけで「別に2Dで良くね?」って3D映画観てて一番思いたくないことを思ってしまった。
 しかも手持ちショットだけ悪酔い防止のためなのか何なのか2Dになってたりする。3D映画が消えるか復活するかの瀬戸際の時期にそんな半端なことする??最初から3Dで撮るんだったらそういう(3D向きでない)ショットを撮らないようにするとか、60フレームで撮るなり何なり改善策立てて「新しい3D映画」を提唱するとか、そういうことしてほしかったなあ。これじゃあ8年ぐらい前のトランスフォーマーのダークサイドムーンから進歩してないじゃんって思う。
 とか言いながらも自分は当然だけど3D映画なんか1ミリも撮ったことないんで、たぶん3D映画撮ってる人なりの葛藤とかいろいろあるんだろうなあ。にしてもキャメロンもロドリゲスもあんだけ3D3D言ってたのに今回自分の読んだ限りのインタビューでどこでも3Dについて何も言ってないのはどういうあれなんだろう。アバターの時に「今後3Dでしか俺の新作は撮らねえ!!」とか言ってたキャメロンは今のハリウッドをどう見てるんだろう。
 全然アリータの話から逸れたけど、やっぱり出来不出来は別にして、こういう新技術を恐れることなくドーン!!って投入してバチクソ金かけて自分らのビジョンを徹底的に描き切る映画が自分は本当に大好きだなと思った。しかもロドリゲスのテキサスにあるトラブルメーカースタジオで撮り切るっていう。容姿や年齢から解放されて「役を理解しているかどうか」だけの基準で役者が選ばれ、パフォーマンス・キャプチャーキャラとして、完全にCGで人間の脳みそが視覚化された空間の中で芝居をする、そういう新時代の映画の見本のひとつとしての文化的価値をめちゃくちゃ感じた。早く自主映画もこういうシステムで撮れる時代来てくれ
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