松岡茉優

メリー・ポピンズ リターンズの松岡茉優のレビュー・感想・評価

4.6
俺はロブ・マーシャルの次回作にめちゃめちゃ期待していた。特に『ラ・ラ・ランド』を観てからは。
『ラ・ラ・ランド』はミュージカル映画の伝統を表面だけつまみつつも、それを見事にぶっ壊した作品である。褒めているように思えるだろうが、粗の多さが目立ち、曲以外は最低の映画だと今でも思っている。そんな『ラ・ラ・ランド』を観終わった後に、ある監督の名前が浮かんだ。その名はロブ・マーシャル。『シカゴ』というスーパー傑作をこの世に残した以降、ゴミ以下のミュージカルを量産していた監督である。なぜ彼の名が浮かんだか。それは『ラ・ラ・ランド』よりもロブ・マーシャルが撮ったゴミ以下のミュージカルの方が面白いのではないかと感じたからだ。彼の作品はミュージカル映画の伝統を踏まえつつも、新しいことに挑戦する姿勢を見せていた。(その多くは大失敗に終わってしまったのが…。)私はスカした『ラ・ラ・ランド』を遥かに圧倒するようなミュージカル作品をロブ・マーシャルに撮って欲しいと強く感じた。そうでもしてもらわないと、気が済まないほど怒り狂っていたのである(映画にキレるほど、無駄な時間はないのだが…)。そして、調べてみるとメリー・ポピンズの新作をロブ・マーシャルが撮ることを知った。メリー・ポピンズは言わずもがなミュージカル映画の古典である。ロブ・マーシャルの伝統を踏まえた作風とミュージカル映画の古典が合わされば、とんでもない傑作が誕生するのではないかと思った。が、しかし彼が直近に撮っているミュージカル映画は『NINE』『イントゥ・ザ・ウッズ』である。申し訳ないが、2作ともウンコにゲロをぶっかけたようなどうしようもない映画である。本当に彼がまた傑作を撮れるのだろうか、私は彼を疑いつつも、とんでもないほどでかい期待を胸に秘めていた。(意味不明)
結果として本作は序盤から涙が溢れるほどの素晴らしい映画だった。昔ながらのミュージカル映画を想起させつつ(ご丁寧にOvertureまである…)も、伝統の継承だけに留まらない傑作である。何よりも素晴らしいのは『ボーイフレンド』を想起させる、飽きるほど長いレビューシーンの連続である。こんな贅沢が現代のミュージカル映画でも許されるとは!!!ロブ・マーシャルが「お前らこういうのが好きなんだろ?なあ??」と言いつつ手掛けたに違いない。本当に魔法にかかったような気がする素敵な映画をありがとう。だが一つ疑問が残る。なぜどうしようもない映画ばかり撮っていたロブ・マーシャルはこんな傑作を生み出すことができたのか。それは『ラ・ラ・ランド』を観て「本当の」ミュージカル映画を撮ろうと決意したからだと私は想像する。あくまで個人の意見だが「古典を舐めるな」というメッセージすら感じる。カスみたいなミュージカル映画が持て囃されている現代で唯一の傑作だと思う。本当にスカした『ラ・ラ・ランド』を遥かに圧倒するようなミュージカル映画だった。ありがとう、ロブ・マーシャル 。
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