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手紙は憶えているのMUAのレビュー・感想・評価

手紙は憶えている(2015年製作の映画)
3.6
元アウシュヴィッツに収容されていた認知症持ちのゼヴが、同胞である老人ホームの仲間マックスと共に、戦時中に自分達の家族を殺したナチの責任者へ復讐しようとする話。
これは前情報なしで見た方が良いが、アノ映画とアノ映画を掛け合わせたような作品。
しかし、題材自体はとても重く、映画としても充分楽しめるが小説で読んだ方がより心理描写なども鮮明に伝わり、一層濃厚な作品に仕上がっていた気がする。
(というのも最近から連城三紀彦の小説を読み始め、彼の書くミステリの巧すぎる捻りと圧倒的な心理描写の2つが見事に両立する様に心を奪われてしまっている為・・そもそも媒体自体が違うので比較してはいけないけど)

しかしこういった映画は、「老人は非力」などという固定観念を壊して新たな可能性を考えさせてくれるのでとても勉強になる。
まさか老人が、保身用ではなく復讐する為に銃を持つはずがないだろう、という”まさか”=見過ごしやすそうな話のタネをちょいちょい見せてくれる。
最近話題にもなったホラー(?)映画「ドント・ブリース」も然り、これはこうである/この年齢層のキャラはこんな社会的役割でしかない、などといった硬くなりがちな頭を柔らかくしてくれる・・と言った意味でも良い映画だった。
また、歴史や感情の蓄積が人一倍多い=高齢者、という見方をすると一層この映画の題材の重さが伝わってくる。しかし残念なことにこの映画からはあまりナチにまつわる”重さ”を感じられず、衝撃的な映画という感想だけになってしまった。
だからもし小説が出れば絶対読みたかったなと。素材はすごく良いからより感情移入させて読むことで、読み手が歴史や人間一人一人の重さを改めて考えることが出来るのではないか?と。
(でも細かい伏線はあんまり回収出来てなかった気も・・・。)

勝手な感想ベラベラ述べたけど、良い映画でした。

<メモ>
キャラ設定(外面)と動機や方向性(内面)=想定出来なさそうな作り方
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