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シクロのmareのレビュー・感想・評価

シクロ(1995年製作の映画)
4.0
前作の繊細な心理描写を引き継ぎながらも残酷な描写をも取り入れた異色のヤクザ映画。トランアンユンがここまで容赦なく描くとは思わなくて正直驚いた。オリエンタルな映像美が粛々と溢れる独特な暴力映画だ。登場人物もどこか気が触れていて常に哀しさを纏わりつかせているようだ。貧困による経済格差は力の差へと直結し、弱き者は奪われ虐げられ、生きていくためには手段を選ばず裏社会に堕ちていく。聾唖のトニーレオンのナレーションが印象的で詩人のように心象風景が物悲しげに語られていく。映像面で言えば、フラッシュバックとペンキに塗れた主人公の死と隣り合わせの中でのヴィヴィッドな絵面が画期的で見惚れてしまった。まさにラリっているからこそ誕生した映像美だ。そして唐突にかかるCreepにも拍子抜けした。まだThe Bendsがリリースしたくらいの時期だというのに劇伴に起用するとは。トランアンユンの先見の明も垣間見れた。
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