天豆てんまめ

トリガール!の天豆てんまめのレビュー・感想・評価

トリガール!(2017年製作の映画)
4.1
土屋太鳳という類まれなる身体能力とど根性精神をもったその素材を120%活かしきった傑作青春映画だと思う。

これはテンポとコメディとストーリーテリングに定評のある英勉監督の手腕が大きい。

とにかく、この役は土屋太鳳以外にはできない。汗だくで車輪を漕ぎまくり、高速スピードでマウンテンバイクで疾走する。

流されるままに生きてきて、ノリで行動していく彼女のテキトーさに共感できる余地もなく、大袈裟過ぎる顔芸に辟易する観客もいるだろう。

でも、それでいいのだ。この映画は画面いっぱいに弾けとぶ、土屋太鳳の生命力爆発を受け止める映画なのだから。

「るろうに剣心」のあのアクション、シーラのMVで魅せたあのダンス、日本体育大学舞踊科という素性をもって芸能界に飛び込んで、自分ピッタリの役柄を引き寄せた彼女(JとPKとか兄に愛されなんとかといったラブコメは観る気にならないけど)の根性に天晴れなのだ。

もちろん同世代の女子にぶりっこと人気が無いのはよくわかる。バラエティ観ていても、インタビュー観ても、共演陣と距離が近すぎて、言葉遣いもフランク、ちょっとわざとらしい仕草。でも、狙っているというより、狙いも透けて見えるほどに天然で全てに全力投球なのでなかろうか。お気に入りのイケメンに擦り寄る感じが許せないファンもいると思うけど、まあ映画現場ではキャスト、スタッフと垣根なく、ハグしちゃうような、垣根なし女優のように思える。いいのではないだろうか。私は是非その現場に参加したいと思う(笑)

土屋太鳳論になってしまったが、他のキャストもいい味出している。

驚いたのは、この弾丸娘とバディを組む間宮祥太郎の素晴らしさだ。眼光鋭く伝説の狂犬と言われるが、実は水面恐怖症のメンタル最弱男をこれ以上にない説得力で演じている。全力太鳳と全く引けを取らず、舌鋒鋭く言い合い、脅威の身体能力を見せつける。そして彼も顔芸とコメディセンスは素晴らしい。

対照的な爽やかメガネ男子、高杉真宙も役にぴったりはまってる。でもぴったりはまり過ぎていて、間宮祥太郎インパクトに押され気味。

池田エライザはもう少しいつもの色気を出して良かったと思う(笑)芸人ワンポイント登用のOB役のナダルのあの美声がナレーションのようにエコーかかりまくりで、当時、映画館内に響き渡るのがやけにはまっていて気持ち良かった(笑)ステレオタイプのキャラ設定にしても、英勉監督のギャグ尽くしの台詞もテンポも私はノリよく楽しめた。

鳥人間コンテスト。たまに見ると、あの一瞬のフライに懸ける相当な努力と葛藤が、祈るのような応援が、そこに伝う汗と涙に、こちらも胸揺さぶられる。見事なドラマ。見事なエンタテインメント。これぞ青春という舞台だと思う。

それを感動押しでなく、この全力コメディ青春映画に振り切ったのは正解だと思う。

感動8割ではなく、笑い6割、汗と爽快感3割、全身元気になって健やかな感動1割(の満足感)。クライマックス。あの琵琶湖(ロケ地は千葉の手賀沼っぽいが)での飛行シーンはほぼ土屋太鳳と間宮正太郎の叫びまくり、漕ぎまくり、飛びまくりのノンストップ20分がいい。

観終わって爽快感が心に晴れ渡る。
この映画、結構好きだ。

英勉監督はヒロイン女優の魅力を引き出すのがうまいと思う。