無知A

哭声 コクソンの無知Aのレビュー・感想・評価

哭声 コクソン(2016年製作の映画)
4.0
物語の外から中を見た時、答えが分かるように出来ている。しかし、物語の中から答えを探そうとすると、罠にハマってしまう、この罠とは、パッケージにも書かれている「疑え、惑わされるな」という言葉からも見て取れる。今作では、監督自身、カメラが写しているものも私たちを騙そうとする。これについては後述する。
作り手は、作中の日本人と正体不明の女、観客から両方が疑われるように物語を構築している。初めは、人種の差異や町から外れた山奥に住んでいるといった主人公らとは異なる日本人に疑いを向けさせる。そして、祈祷師や日本人の言動によって、疑いの矛先を正体不明の女へと変化させる。もしも、これらの要素を感情も交えて考えるのなら、おそらく疑心暗鬼になって混乱するか、ある人物を見落とす事になってしまうだろう。

ところで、先程は騙しという言葉を用いたが、私が感じる今作の不満点は正にここだ。ネタバレになるので、深くは述べられないが、分かりやすい所だと、崖から落ちて痛みに顔を歪める日本人と祈祷師によるお祓いシーン。真相と照らし合わせると、大きな違和感がある。ミスリードを誘うにしても、ただ混乱を招くだけで、やり過ぎだと思う。過剰なミスリードは他にも存在し、ただ話を長くしてしまっているだけなので勿体無い部分だった。しかし、結果としてミスリードの役割を果たしているだけに何とも言い難い。

総じて、過剰な部分はあるが、賞に相応しい作品だった。推理が好きな方には是非オススメしたい。
無知A

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