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アリー/ スター誕生のおぼっとのレビュー・感想・評価

アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)
4.3
何か陳腐なレビューになってましたんで、書き直します。

今作は、何故ジャックが重度のアル中&ヤク中になったのか、アリーはいつスターになったのか?
このポイントが理解出来ないと、面白さや深い感動を感じないかもしれません。

冒頭からジャックはアル中でした。また、聴力が弱く、残存の聴力も危うい。
耳が聞こえなくなると、もちろんミュージシャン人生は終わる。その現実から逃避するために酒を煽っているわけです。
そんな中偶然出会ったアリー。
抜群の歌唱力とソングライティング。
そんな彼女をライブに帯同させ、ジャックのプロデュースの元、開花していきます。
そう、アリーの歌唱力、ソングライティングの力を深く理解しているのは、ジャックなんです。
そして彼女を心から愛しているのもジャック。
やがてアリーはスカウトされ、ポップアイコンとして成功していきますが、落ち目のジャックとはすれ違って行きます。
グラミーにノミネートされた日のバスルームでの喧嘩。
ジャックはノミネートに対し素直に喜んでますが、彼女がライティングした曲ではない、あのプロデューサーが、アリーの真の力を見いだせていない事に腹が立ってるんですね。
だから、言いたくもない事を言った。でも、アリーには伝わらない。
ここが第一のポイントです。
ここから、ジャックはアリーに対して言いたい事を言えなくなってしまう。
ダンスをするアリーに何も言えない。
髪を染めるアリーに何も言えない。
唯一呈した苦言として、看板の前で、魂を掘り下げて歌い続ける事が大事という事。
彼がミュージシャンとして徹底している事です。
また、アリーの看板を見て、鼻が素敵だ、鼻を馬鹿にした連中に、鼻のドアップを見せてやる、と言ってます。
これは暗に、アリーに対して真の力を信じなさいとも捉えられます。
聴力が弱まっている中、グラミーの授賞式の際、スペシャルパフォーマンスとしてもギターを演奏するジャック。
耳が聴こえない、モニターで確認出来ない、妻の受賞に華を添えるために失敗は出来ない、このプレッシャーがアル中&ヤク中を加速させ、挙句に妻の受賞を台無しに...これが第2ポイントです。
精神病院での療養中、彼は作詞や曲を考え書き溜めてます。やがて真の姿に戻る妻のためです。
妻が訪れた際、グラミーの件を謝罪します。
しかし、元の君に戻って欲しいと言います。これはジャックの最期の助言です。
真の歌唱力・ライティング力を発揮する君に戻れと。
ここでもう、ジャックが死を選択する事は決まってたのかもしれません。
病院から出所した日、ジャックの兄にも謝罪してます。
尊敬していたのは、兄だったと。
また、馬鹿プロデューサーに、あの日の尻拭いが大変だった、彼女に迷惑かけるなら別れろと言われてます。
これが決定打です。
自殺する直前、アリーに対しジャックは、もう一度君が見たかったと言います。
これは、真の歌唱力・ライティング力を発揮するアリーをもう一度見たかった、ということです。
ポップアイコンで評価されてるアリーは本物のアリーではないと。

ジャックの死後、追悼コンサートで歌った曲は、アリーが追悼のために作った曲ではなく、ジャックがアリーに授けた曲でした。
アリーの才能を見いだし、その才能を最後の最後まで信じてやまなかった、アリーを心から愛していたのはジャックでした。
ジャックが遺した最後の曲、
I’ll never love again
を歌い上げ、目を見開いた時...
ジャックの意思がようやく伝わったその時...
アリーという真のスターは
誕生したのでした。
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