undo

ラサへの歩き方 祈りの2400kmのundoのレビュー・感想・評価

4.2
祈りの旅路。

中国映画。
チベット自治区の外れの小さな村から聖地ラサまで、巡礼の旅を行う3家族の物語。

他人の聖地巡礼なんて見て面白いのだろうかと思いつつもフォロワーさんのレビューがなかなか高評価だったこともあり鑑賞。凄かったです。心揺さぶられました。

本作はドキュメンタリーではないが、旅をするのは実際にチベットの村に住む村人達。そのパーソナリティも役柄とほぼ同じ。老人も妊婦も子供も共に旅をする。

旅の出発点、マルカム県プラ村からチベット仏教の聖地ラサまで約1,200㎞。
さらには次の目的地、カイラス山までさらに1,200㎞。
合計2,400㎞の旅路。普通に歩けば3ヶ月くらいかかるこの道程を、五体投地という最も丁寧とされる方法で進んでいく。よって彼らの旅は1年にも及ぶ。

五体投地については、百聞は一見にしかず、なので予告編などを見て頂くのが一番なのだけど、一言で言うと、体を地面に倒れこむように投げ出しながら進む方法。時間はかかるし、体にダメージも蓄積される。だからこそ意味があるということなのだろう。
同じアジアといえども、日本とはスケールの違う雄大で過酷な大自然の中を、その五体投地で進んでいく。

誰から見ても過酷な旅路。それでも彼らの顔からは笑みが消えないのはなぜだろう。
それは恐らく、自分の全てを預けられる篤い信仰心と「他人のために祈る」というチベット仏教の教えが彼らに根づいているからだろう。
人に恩を受ければ手伝いをして返し、仲間が怪我をすれば治るまで待ち、お金がなくなれば働いて稼ぎ、ゆっくりと時間をかけながらも進んでいく。それらすべてを含めての祈りの旅路と言わんばかりに。人として、彼らは一番大切なものをきちんと持ち続けているように思える。

もし、輪廻というものがあるのなら彼らは最も天上界に近い存在なのかもしれない。信仰心とは無縁な生活をしている私も、そんなことを考えた。
undo

undo