いがらっしー

永遠と一日のいがらっしーのネタバレレビュー・内容・結末

永遠と一日(1998年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

この映画は、死を覚悟し闘病入院する前日、詩人だった老人が難民の少年と出会う。一緒に過ごした『人生の最後の一日』の話

イタリアの街も海も静かで寂しい
死が近づくと人は楽しかった筈の昔を思い出すのか、してやらなかったことを後悔するのか。
生まれたばかりの娘や亡くなった妻との思い出。大家族のシーン
難民の少年を助け出す。
国境でのシーン
言葉を買う詩人の話。
花嫁さんと花婿さんのダンス。
詩人の台詞はいつも芸術的で文学的。
母親にもお別れを告げに行く。
『なぜ願うことが
願い通りにならない?
なぜ我々は希望もなく腐っていくのか。苦痛と欲望に引き裂かれて。
なぜ私は一生よそ者なのか。
ここが我が家と思えるのは、まれに自分の言葉が話せた時だけ。…自分の言葉。
失われた言葉を再発見し、忘れられた言葉を沈黙から取り戻す。
そんなまれな時にしか自分の足音が聞こえない。なぜです教えてください。なぜお互いの愛し方がわからないのか?』
母親が自分を呼ぶ声が聞こえる。

夜中に少年と一緒に乗るバスでの出来事は、まるで人生の縮図のようで美しい。
自分の『言葉』を聞いてないと喧嘩する恋人たち。
音楽を奏でる若者達。
そこへ『言葉を買う詩人』もやって来て呟く…「人生は美しい」
人生はあとどのくらいだろう…
最後のお別れは辛い。
けれど、自分の人生を振り返ったこの日、ああ人生とはなんと美しいものかと幸せな気持ちにもなる。だれしも訪れる死への旅。いつまでも生きていられる訳ではないのに。
「明日の時の長さは?」という問
に妻が答えた。
『永遠と一日』


DVD特典映像でテオ・アンゲロプロス監督は『言葉で君を連れ戻す』について語っている。
詩人や作家が使う道具は『言葉』だ。言葉を失うことで道も失う。
言葉を発すると自分の過去も妻と共にあった過去も連れ戻すことが出来る。君はそこに存在し、その時、全てが真実となる。ラストで主人公が死を目前にしてした最後の行為は、海に向かってそれでもなお言葉を発することだった。過去を連れ戻す為に。
最後の日に少年は言葉を送り、それを受けとる。言葉を探り出すことで道を探り出していた。
『言葉』は開かれた平野の方へ開かれた海に向かって、『新たな道』を開いてくれる。

映画制作もまた作家や詩人と同じく映像や言葉を使って、新たな道をみせているのだ。
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