安堵霊タラコフスキー

永遠と一日の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

永遠と一日(1998年製作の映画)
5.0
先週アンゲロプロスの7回目の命日だったことを思い出したので、彼の映画で一番好きなこの作品について。

アンゲロプロスの作品で最もメッセージ性の薄いものと思われるこの作品は、それ故に純粋に詩的で芸術的なシーンが際立っていて、殆ど全編絵画のような映像となっている為、一日中どころかそれこそ永遠に見続けられるほど美しい映画となっていた。

この作品を見ていると、ただ人間が歩いているだけで感動する映画こそ至高ということを改めて思い知らされる。

思えばカンヌ映画祭のパルムドール受賞作に興味を抱いて色々調べたときにこの作品の存在を知って、その崇高とも言える芸術的映像作りに感動したのが映画における芸術要素を重要視するきっかけともなったから、そういう意味でも自分の中で大きな位置を占める映画。

同じ年に出品されたフルスタリョフ、車を!に賞が渡らなかったのは不服だったけど、この作品に最高賞が授与されたことに関しては妥当すぎるとはいえスコセッシら審査員に感謝したい。

それにしてもアンゲロプロスがこの作品ほど芸術的要素を意識し始めたのは、ちょうどタルコフスキーが亡くなってからのように思えるのだけど、やはり同じ長回しの使い手の逝去に思うところがあって彼の作風をより意識した結果なのだろうか。