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銀魂のsatoshiのレビュー・感想・評価

銀魂(2017年製作の映画)
1.8
 「江戸末期、黒船の代わりに宇宙人が襲来した」という奇抜な設定と個性的なキャラ、そして各方面を敵に回すギャグと下ネタで人気を博している「銀魂」がまさかの実写化。私自身、銀魂は好きで、単行本は「白血球王篇」までなら持っていますし、アニメも放送されたものと劇場版は全て見ています。そんな感じなので、不安7割、期待3割で鑑賞しました。

 結論として、何とも言えない出来になっていて、漫画を実写化することの難しさを痛感させられる作品でした。

 福田監督が原作ファンにかなり気を使っていることはよく分かります。キャラクターの外見は非常に完成度が高いし、演技も原作寄りです。ストーリーも「新訳・紅桜篇」をできるだけ忠実になぞっています。しかし、唯一、ギャグ要素は福田監督の色がはっきり出ています。

 ですが、この「できるだけ原作に寄せた」ことが、かえって作品に弊害を生んでいると思います。それは主に演技に出ています。本作では、原作及びアニメでは許容されていた「アニメ的な」オーバーなリアクションをそのまま役者が演じているのです。つまり、銀さんがぼけると、新八が「オイイイイイイイイ!!」って叫んで突っ込むのです。これは二次元だからこそ許容できた表現で、三次元でやられると正直、ただただうるさいだけです。まあ、これにはそもそも銀魂のようなTV的な「ボケ」と「ツッコミ」がある作品は、俯瞰的な視点を取る映画には合わないという問題があるから生じるものだと思います。そして、「ボケ」と「ツッコミ」が無くなったら、それはもう「銀魂」ではないと思っているし、ツッコミを取ったら新八には眼鏡しか残らないのでそこは良いです。

 しかし、このギャグに関して、どうしても許容できない点があります。それは、原作及びアニメにあったテンポが受け継がれていないのです。アニメでは、編集のおかげか、キャラ同士のボケとツッコミのテンポが非常に良く、画面がパッパっと変わっていきます。そのテンポ感が、銀魂の笑いを生むのに一役買っていた気がします。しかし、本作では1つ1つのギャグのテンポが悪い。これは多分、福田監督の撮り方の問題で(違ったらすみません)、1つ1つのギャグが長いんです。例えば、村田兄が銀さんの話を聞い聞いてないってくだりも、一回で済ませればいいのに、悪ノリして3回も銀さんに叫ばせてるんです。他も要らんのに無駄に長くしています。なので、映画全体が非常に間延びしています。

 また、「原作通り」なのは台詞もそうです。銀魂は台詞が多いプラス長いことで有名ですが、その長い台詞を一々役者が喋るんです。それはいいです。しかし、やはり撮り方の問題なのか、どうにも喋っている時にストーリーが止まってしまい、やはり間延び感が出てしまいます。

 つまり、「銀魂」って、「アニメであること、漫画であること」にかなり助けられていたんだなと思います。

 本作は基本的に「原作に忠実」です。しかし、その割には変な改変も目立ちます。最後に銀さんが高杉とやりあうのは良いと思います。しかし、何故、エリザベスの出番を削ったのでしょうか。結構いい見せ場があったのに・・・。エリザベス先輩見たかったッス。後、高杉と似蔵の出会いを描いてないから、似蔵の「光」の意味がいまいち薄れてしまった気がするし、高杉が似蔵に切りかかったときの台詞もカットされ、高杉の複雑な心境描写も減ったと思います。で、変な改変をしたわりに要らんコントを入れてるから、余計グダグダしています。

 後、今作、表現が一々露骨です。それは予告編を見たときから感じていました。予告編で銀さん、「ちわ~」って言いますよね。あれ、原作だと台詞一切無いです。ただ銀さんがにやけて手を振っているだけです。それでカッコいいのに軽い感じを出せていました。しかし、本作では「ちわ~」って言うんです。つまり、監督が「はい、ここ、ゆるいとこですよ」って示してるんですよ。また、高杉の初登場シーンも、高杉の目が光るんです。なんでしょうね、アレ。写輪眼?とにかく、こういう露骨な表現が多くて、辟易しました。

 したがって、本作は「原作通りに」やった結果、映画として完成度が低くなったように思います。後はCGチープすぎ(わざとだそうです。見当違いでした)。

 ここまで酷評しましたけど、役者はみんなよかったです。特に中村勘九郎ですね。畳の下から出てきたときが一番笑いました。
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