しゆ

ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Yearsのしゆのレビュー・感想・評価

4.1
2022年新年1本目。1年くらい前にクリップして気になってたけど今日から配信開始。プライムビデオに感謝。
彼ら以上に''伝説のバンド''って肩書がふさわしいグループはいない。曲名にもあるEight Days A Weekは週8日、すなわち週7日では足りない大忙しの毎日を指していて、本作は1962年のキャヴァーン・クラブ公演から1966年のバンド最後のライブとなったサンフランシスコ公演までの人々の熱狂に揉まれる日々を振り返り、そしてなぜ彼らはライブツアーをやめてしまったかを紐解く。
ビートルズは楽曲も人間性もビジュアルもすべてが新しくて、女性ファンのつんざくような声援には金切り声って表現が的確。初期の4人の無邪気さとお茶目からでるジョークには自然と頬が緩んでしまう。60年代でこんなにはしゃいでた若者たちも、現在は70歳前後のおじいちゃんおばあちゃんなんだと考えると感慨深い気持ち。「永遠にビートルズが好き。105歳のおばあちゃんになってもよ」って言葉を残してたエイドリアンは今でも元気だろうか。
世界的に有名になったからこそ、訪れる国では主義主張の標的として(日本の場合は西欧の物質主義の象徴として右翼に)狙われたり、ジョンの「僕たちはキリストより人気がある」ってイギリスでのジョークが海を超えて真面目に受け取られてしまい、公演先のアメリカでの宗教観の否定に繋がったことにより様々な人々に配慮する必要ができた。これは現代でも同じで、ポリコレだとかダイバーシティだとかうるさい世の中になったなぁと思う。そしてその先にある何より恐るべきものはメンバーが自分たちのやりたい演奏をできなくなってしまい観客たちも楽しむために来ようとしない本末転倒具合。人気者の性ではあるけどその一言で済ませてはいけないと思う。やがてメンバーもそんな状況にうんざりしてきて、全米最後のツアーでは演奏後に囚人護送車に押し込められる始末。それ以降スタジオでの制作が活動の拠点となり、映像はアップル社での最後のゲリラライブとともにエンドロールへ…。
結成した時代が違えば長年に渡ってもっと活躍していたとも妄想できるし、60年代だからこそビートルズは花開いたとも言える。解散やオノ・ヨーコ、暗殺などには触れられなかったので決定版の呼び声が高い『ザ・ビートルズ Get Back』を観てみたくなった。

「楽しくなかった。誰も音楽を聴いてない。''ビートルズ''というものを見に来るだけ」
しゆ

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