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DEMONLOVER デーモンラヴァーのnetfilmsのレビュー・感想・評価

DEMONLOVER デーモンラヴァー(2002年製作の映画)
3.7
 映画は冒頭、日本での東京アニメ社の買収交渉帰りの機内から始まる。主人公ディアーヌ(コニー・ニールセン)は華麗な手さばきで、直属の上司であるカレン(ドミニク・レイモン)の飲料に睡眠薬を盛り、彼女が意識を失ったところで2人組に拉致させる。まんまとカレンのポジションに上り詰めたディアーヌは、東京アニメ社の買収計画を押し進めながら、デーモンラヴァー社の動きに注意を払っている。彼女は実はデーモンラヴァー社の偵察のために、マンガトロニクス社から送り込まれた産業スパイだった。今作が一番異様なのは、途中まで全て思い通りに事が進んでいるように見えた主人公があっという間に罠に落ち、連戦連敗でやがて陰惨なクライマックスまでずるずると落ちていく。前半部分はまさしく産業スパイ映画の王道と呼ぶべき展開を見せているが、後半はむしろホラー・サスペンス映画と呼ぶのが相応しいのではないか?

 撮影監督を担当しているのはエリック・ゴーティエではなく、ドニ・ルノワールだが、短いショットを矢継ぎ早につないで、実にスピーディで躍動感のある活劇に仕上げている。近年のアメリカ映画と比べても、その活劇性においてまったく遜色はない。その矢継ぎ早のアクションの中に、後半暗い影を落とすのは、映画の中に何度も登場するフレーム内フレームの不穏な空気だろう。モニター画面に映し出される東京アニメ社のモザイク付きの残酷なポルノ・アニメ。その後の3D映像の実に中身のない薄っぺらな映像。ホテルで観るレズもののアダルト・ビデオ。ハンディ・カメラの中の自分が拉致された映像に至るまで、、作られた残酷な映像がやがて現実世界のなかに静かにゆっくりと浸食していく。今作に肌触りが近いのはアベル・フェラーラ『ニューローズ ホテル』だろう。坂本教授の商談のシーンは、坂本安美と大森南朋の商談のシーンに呼応し、中盤以降急激に官能性を帯び始めるあたりも非常によく似ている。ただヘルファイヤークラブの暴力性や官能性も、無機的で少々物足りない。ヘルファイヤークラブの拷問よりも、東京アニメ社のアニメの方がよっぽど残酷に感じられた。
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