ちろる

シークレット・オブ・モンスターのちろるのレビュー・感想・評価

3.2
なかなか暗くて難解な作品でした。
不穏な音楽に包まれて天使のような美少年と無表情な美しい母と厳格で家のことを顧みない父親3人の笑いのない暗い生活の営みを見せつけられて、何も考えず享受すればけっこう退屈な作品。

「ある独裁者の少年時代」という原題から推測するに、この美少年がのちに独裁者になる事は推測できるのだけど、この「何故彼がそうなったか」の部分のパズルのピースを非常に拾いにくく描いている。

ざっくりと推測すれば、「父も母も支配的で冷淡なこんな家住んでたら心荒んじゃうわ」という感じにも見えるのですがヨーロッパの上流階級の両親なんてどこもこんな感じだったという事で、これは大きな理由にはならない。
いくつかのシーンや台詞で暗喩的なものはあるけど、最終的にははっきりとは分からないようにしてある。

最終章にとある秘密が分かるのですがそれは明確答えというわけもなく、結局のところこのパズルのピースを拾ったらその意味は観客の感覚にお任せといった感じに描かれていました。
というか、正直少年は期待してたサイコパス度も少なく、こんな程度の反抗期の少年時代を過ごしたってすごく立派に成長する大人はたくさんいるわけで、「何故」なんて実はなんの意味もない。
いつの時代もどこかの国で独裁者は生まれていく。
そしてまた未来の独裁者がどこかの国でいま産声をあげたかもしれない。そう思うとゾワっとしました。
ちろる

ちろる