Inagaquilala

サバイバルファミリーのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

サバイバルファミリー(2017年製作の映画)
3.9
これは面白い。終始、笑いっぱなしだった。ある日、突然、電気が使えなくなる。テレビも冷蔵庫も、スマホもパソコンも。電気を必要とする全てのものが使えなくなる。電車も動かず、車も立ち往生、移動の手段は、歩くか自転車だけ。この危機的状況を、都会に暮らす、ごくごく平凡な一家がどう切り抜けていくかが、物語の中心だ。

父と母と娘と息子、この4人一家の設定が秀逸だ。祖父から送ったきた魚を気持ち悪いと食べない娘。片時もスマホを離さない息子。父親は仕事一筋で、家族の団欒はすっかり冷え切っている。この一家が、サバイバル生活の中で、家族の絆を取り戻していく。

電気が止まり、水も少なく、食料も心細くなり、一家は自転車に乗って、東京から鹿児島に住む祖父の家を目指す。その間の、サバイバル劇が、事細かに描かれる。バッテリー補充液を飲用にしたり、ペットフードを口にしたり、水族館では、飼育していた魚で炊き出しをしている。

とにかく電気が使えなくなった世界を日常生活レベルから描写していく監督の目は確かなものだ。よくよく練られた演出と脚本だ。途中、岡山あたりで、豚を飼育している農家で、逃げ出した豚を捕まえるのを手伝い、ひとときの食住満足できる生活を得るが、それでも一家は鹿児島の祖父の家をめざす。100日以上かけて鹿児島まで自転車で向かう。

どんなラストになるのだろうと、途中から大いに気になっていたのだが、最後はなるほどなという終わり方だった。とにかく笑える映画ではあるのだが、それだけではない、いろいろと考えさせる作品でもある。矢口監督、やったね、という感じだ。
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