せ

荒野にてのせのレビュー・感想・評価

荒野にて(2017年製作の映画)
3.7
ことし24本目


荒野にて(Lean on pete)

元々クリップしてたし、同監督の「weekend」が良かったので鑑賞。

幼少期に母に捨てられ、恋人が高頻度で変わるような少しだらしめな父親1人に育てられ、学校にも行けていない、孤独な青年:主人公チャーリー。最初のシーンから結構過酷な状況にいるのに慣れているのか不思議となんともなさそうな彼が印象的。精神が強そうにうつる。
夫がいる女性と父は恋人関係になるが浮気がバレてしまい、夫に暴行され死んでしまう。かつて面倒を見てくれた伯母も音信不通のため天涯孤独になってしまった主人公とたまたま面倒をみることになった、老いた競走馬ピートの旅のお話。ピート可愛い。

おそらく、ピートのフルネームがlean on peteなのだけど直訳だと「ピートに寄りかかる、頼る」にもなる。孤独になった時、どうしようもなくなった時。言葉は通じなくても、返ってくる言葉はなくとも、黙ってそこに居てただただ話を聞いてくれるピートの存在へのチャーリーの思いを表現しているようです。

この孤独な青年の正確な年齢がわからない。その時々に応じた、彼が他人に言う年齢がコロコロ変わるからだ。15〜18歳あたりなのだろうが、あの全てが不確かな感じが学校に行けてない子どもらしさを示しているし、自分と重ねているのか、馬に愛情を注ぎ自分の過去を語りかける姿、共に伯母のいるところへボロボロになりながら歩む姿は非常に悲しい。
ラストシーンも安心はするのに、ピートを思うセリフに胸が苦しくなる。


馬の調教師のデルに出会って馬の面倒を見始めるんだけど、デルを、なんとブシェミが演じているのが興味深い。初登場シーン、声が先に聞こえてくるんだけど彼だってすぐ分かるね。声特徴的だからさ。
いまあんなに老けちゃったのか〜にしても町田康に似ているな〜笑


この監督はそれぞれ背景は違えど、人の持つあらゆる孤独を描くのが得意なんだろうね。

ずっと感情をおさえていた主人公の最後のやっとの感情吐露はなんともカタルシス効果がありますね。
せ