一

中央地帯の一のレビュー・感想・評価

中央地帯(1971年製作の映画)
-
ズーム映画『波長』とパン&ティルト映画『←→(Back and Forth)』の発展型というか集大成的な3時間の構造映画。見渡す限りの山岳地帯の一点に可動式のロボットアームに取り付けられたカメラがあり、水平運動・垂直運動・回転運動・ズームアップ&ズームバックをその方向や速度も含め様々に組み合わせて景色のみを撮影し続ける。運動の種類に合わせて電子音が鳴り、その速度に応じて音の間隔は伸縮する。また、昼から夜へ夜から朝へと時間の経過によって景色も変わっていく。観る側の意識は地平線を頼りにして今カメラがどういう動きをしているのかに集中する。僕のお気に入りは、夜の月を捉えたシークエンスと、水平運動とカメラ自体の回転の組み合わせで地平線がぐるぐる弧を描くように見える面白いやつです。クレッシェンドで激しさを増していく映像のクライマックスはさすがに圧巻であった。『←→』の高速パンがそうだったように、景色がほとんど抽象になる。ゴダール『イメージの本』の第5章がその名も『中央地帯』だったそうだがどんなだったかは覚えていない。
一