JT

ガラスの城の約束のJTのレビュー・感想・評価

ガラスの城の約束(2017年製作の映画)
3.8
完成された家族なんてない
人生の設計途中に愛は転がる

2019 . 77 - 『The Glass Castle』

名作『ショート・ターム』のデスティン・ダニエル・クレットン監督と主演女優ブリー・ラーソンのコンビによるベストセラー小説の映画化
自由奔放で酒浸りな父レックスと自己満足な画家の母ローズマリーのホームレス両親に育てられた娘ジャネットの過酷な生活を描いた実話

改めて幸せとは何か、家族とは何かを問われた
教育をしない父は娘に空腹なら自分で料理をさせたり、泳げない娘をプールに投げ入れたりした
働かずその日暮らしで空き家を転々とし、時には荒野で野宿をしてギリギリな生活を送る
弱者や貧困層に厳しい社会を否定し、自然や経験から学び自由に生きることが大切だと父は言った

傍からみたら虐待だが暴力は振るわない
愛がないのかと言われればそうでもない
愛し方を、育て方を知らないだけなのだ
それでも子供は成長するにつれて苦しむ
家族の辛い出来事が100個あっても幸せな瞬間がたったひとつだけあれば子供は親を憎み切れない
それは家族愛という名の抵抗できぬ呪い
子供はなす術がないのに、親はずるい、卑怯だ
でも悔しいことにこの家族に愛を見てしまった
この社会は嘘だらけだが父だけは娘に正直だった
父の傷を娘が縫合する描写で確信したのだ
ふたりにどれだけの隔たりがあっても完全に切り離すことはできず、父を救えるのは娘だけで、絶対的な絆があり、愛が入る隙はまだあるのだと

ガラスの城は子供の夢と家族の愛で出来ている
純粋で透きとおった綺麗なものと同時にとても繊細で少しの力で崩れ落ちてしまう脆さがある
その城こそが家族の本質で、本当に大切なもの
本当の意味の愛とはそこにあるのかもしれない
JT

JT