ジャイロ

妖しき文豪怪談のジャイロのレビュー・感想・評価

妖しき文豪怪談(2011年製作の映画)
4.0
『片腕』川端康成

原作を忠実に再現したその映像は、妖しくも幻想的でまるで異世界をさ迷っている気にさえなってくる。罪悪感と恐怖と願望が渦巻いて、どちらかというと怪談というより悪夢に近い。
娘の片腕と会話して、娘の片腕を愛でる「私」
頬擦りしてみたり、胸にあてがってみたり、そしてついには口にくわえてみたりして…どうしよう、気を緩めるとただの変態にしか見えない。原作通りの台詞が醸し出す官能的な雰囲気は素晴らしいんだけど、如何せん絵面がヘンタイすぎる…
耳から入る情報と目から入る情報を同時に受け止めることができなくて大混乱。


『葉桜と魔笛』太宰治

姉さんこわいよう
そう言って抱き合う姉妹の姿は涙なくして観られなかった。言葉少なめの主人公の気持ちにようやくついていけそうになった終盤、唐突にそして疑問符だらけの魔笛の音が妖しく響き渡る。色んな感情をこの瞬間にまとめてぶつけられたので当てられてしまいました。
良かった。良かったんだけど、手ぶれがすごくて塚本監督、俺無理ですこの手ぶれ。今度『野火』観てみようっと。
Oヘンリーの短編のようで決してそうではないこの作品。可愛そうだけではないところがすごく好きです。


『鼻』芥川龍之介

火の鳥鳳凰編の我王が出てくるわけですよ。イメージ、あくまでもイメージです。
それは人の業ゆえか、徳の高い僧とは名ばかりの一人の弱い人間の話。とても人間臭くて、そしてあまりにも弱い。これは『鼻』の後日談。最後の台詞に全てが籠められてました。
人間の心の奥底をかきむしる芥川龍之介ならではの『鼻』。盛りすぎた感は多少はあったけど、この中では一番好きかも。そして一番怖かった。音楽がやたらいい。


『童子』『後の日の童子』室生犀星

それは、ちょっとでも強く触れると溶けて崩れて無くなりそうな淡くも儚い親の願い。分かる。泣ける。
苛立ちをぶつけ合い、どうにもならないことで言葉に刺を立てる。相手を責めたその先には、いいことなんてなんにも無かったよ。口調こそ穏やかではあるが、見たことあるなぁこの感じ(笑)
そして、無性にそうめんが食べたくなった。
明日の昼はそうめんでお願いします。