MikiMickle

アイム・ノット・シリアルキラーのMikiMickleのレビュー・感想・評価

3.3
シッチェス・カタロニア国際映画祭パノラマ観客賞受賞

アメリカ北部の片田舎。
解剖兼葬儀屋を営む母と叔母の元で解剖の手伝いをする高校生のジョン。彼は《ソシオパス》社会不適合者と精神科医から診断された、いわば犯罪者予備軍。BTKキラーについて論文を書いていたりする犯罪者オタクでもあり、殺人と死体に対して異常な興味を持っている。もちろん友達はほとんどいない。学校でもいじめの対象となっている。

そんな彼の町で連続殺人事件が起こる。
彼の家に運び出される遺体は、無残にも切り裂かられ、それぞれに無くなっている箇所がある。犯行現場に残るタールのような黒い粘着性の液体…
恐怖におののく住民たちの一方で、身近で起こる殺人事件に刺激を受けるジョン。興奮を隠す事が出来ず、自ら犯人を探っていくのだが、
なんとその犯人は隣人の老人だった……

全編16mmフィルムで撮影した粗さのある美しい映像の中、物語は非常にしっとりと進んでいきます。
ジョンが高校に入学した秋、ハロウィン、パーティー、感謝祭、しんしんと積もる雪、そしてクリスマス。家族や友人などの関係と些細なエピソードの中で起こる変化。ジョンのアップの表情も変化していきます。
殺人に対しての興味のベクトルが変わっていくのです。興味や同調や興奮から違ったものに… 曖昧なティーンエイジャーの不安定さの中、徐々に真の彼の姿が顕になっていきます。

題名からしてどんなサイコパス同士のグログロ攻防戦的バトルが繰り広げられるのかな〜♪うひひ♡と思っていたのですが、想像の斜め上を行く、全く違うものでした‼
途中からもその斜め感はあるのですが、それがラストではさらに‼‼ ド肝抜かれました。着地点が違いすぎる。 なんじゃこりゃ‼‼ 変な映画(笑) ラストもエンドロールも変(笑)

しかし、なんだか心に残る切なさ……

原題は「I’m not a serial killer」のみ。
まさにその題名通りの映画でした。
他者によるステレオタイプな価値観による、自我の間違った植え付け。そこからの脱却……
そして、生物学的に本能的に犯 す殺人。そして深い愛……

ジョン役には、『かいじゅうたちのいるところ』の可愛らしい少年を演じていたマックス・レコーズ。危うげな透明感のあるティーンエイジャー感が良かった。パンダの覆面も可愛いかった♪
連続殺人犯のクローリーおじいさん役には、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などのクリストファー・ロイド。老けはしたものの、怪しさの謎のある怪演でした‼クローリー氏が朗読するウィリアム・ブレイクの詩かまた切なさと葛藤と苦悩を感じるもので……
MikiMickle

MikiMickle