Hoshiduru

否定と肯定のHoshiduruのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
3.9
なんでこんなアホらしい主張との闘いに付き合わないかんの、というやるせなさもあったし、それが必要になること自体にため息もつきたくなるが、それでも何度でも何度でもこれを繰り返していかなければならないのだろう。

自分の抱えた傷を「そんなことはなかった、お前は嘘つきだ」と言われることの絶望的な恐怖と苦痛を想像して、ああ、あの裁判中もきっと何度も歯を食いしばり、拳を握り締め、怒りと恐怖に震え続けた人たちがいるんだろう、と想像すると、やはり無視してはいけない、闘わなくてはいけない、と思う。
そういった意味で、ただ勝つのではなく、どう勝つのか、というところも常に意識し続けた弁護団のことは本当に尊敬する。

時々「え、まだそこなの?」と思ってしまい、もう人と話したくない、すべてを諦めてしまいたい、と思ってしまうことがある。そんな自分に対しても「私もまだ全然だったな」と思うこともある、裁判が始まる時「相手にとっては、むしろ今まで信じてきた哲学を真っ向から否定されることになるかもしれない」とか思っていた自分がいた、相手はただの一市民ではなく、専門家だというのに。
偏見は無知や不安から生まれるものかもしれないが、その無知につけ込む悪意が確実にどこかに無いと、差別は生まれないのだと改めて思い出した。

前に進むからこそ、過去の過ちを無かったことにしてはいけない。過去を恥じて、反省することはとても苦しいものだが、だからこそそれを続けていかないと、本当に前には進めないのだと思い知らされた感触があった。
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