エリオット

否定と肯定のエリオットのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
4.0
裁判では争点について当事者が互いに立証を尽くすが、最終的にどちらも立証できない場合、立証責任を負っている方が敗訴する仕組みになっている。
日本やアメリカでは立証責任は原則としてお金を請求する方(原告)が立証責任を負担するが、イギリスでは逆になっているらしい(ということは勝手に訴えられたのに被告が自己の主張を立証できなければ裁判に負けてしまうということ)。
ネオナチとも交流のあるイギリスの歴史学者アーヴィング(テシモシー・スポール)がホロコーストなどなかったと吹聴し、彼が嘘つきであると本に書いた主人公アメリカ在住ユダヤ人女性歴史学者のリップシュタット(レイチェル・ワイズ)を名誉棄損でイギリスの裁判所に訴えたことから、主人公はホロコーストが存在したことを客観的に証明しなければならなくなった。ところが、ドイツは終戦間際にアウシュビッツなどホロコーストの証拠になるようなものは悉く破壊しており…

あの「ボディーガード」の監督とは思えない落ち着いたドラマ作り。
自己主張の強いアメリカ女性がイギリスの、それも裁判の世界に放り込まれてまるでエイリアンのように戸惑ったり、歴史修正主義者も単なる悪役なだけでなく群衆から卵をぶつけられるなど、結論以外のどこまで実話に基づいているのか分からないが、なかなかリアルっぽい。
出演者もイギリスの俳優が多く(ドラマ「シャーロック」に出ていた俳優も何人か出ていた)、なかでもイギリス人なのにフランスのヴィンテージワインがお好みのベテラン法廷弁護士を演じたアンドリュー・スコットは、冷静過ぎて冷淡な人物のように見えて、実は真摯に仕事に取り組む熱い男を渋く演じておりとても味わい深い。
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