回想シーンでご飯3杯いける

牝猫たちの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

牝猫たち(2016年製作の映画)
3.4
「彼女がその名を知らない鳥たち」が凄く良かったので、その監督であった白石和彌が手掛けた本作をチョイス。とは言っても、こっちは日活ロマンポルノ45周年リブート・プロジェクトの一環で公開された、言わばエロ映画でありまして、AV全盛の現代に一体どんな世界を見せてくれるのか、興味津々で鑑賞。

このプロジェクトでは、10分に1度の濡れ場、製作費約1000万円、上映時間約80分、撮影期間約1週間という条件が課されているのが特徴で、それが監督のスタイルやアイデアを露骨に炙り出しているのが面白い。とりあえず、制作費が安いので有名俳優を使えないのが最大のポイントで、それが結果として、登場するデリヘル嬢を等身大の現代女性として描く事に繋がっている。もしここで名の通った巨乳タレントやアイドルが出てくると世界観が一気に壊れただろう。

メインの3人は、ホームレス、離婚、シングルマザーという各々の問題を抱えており、それをどこにでもいそうな女性が演じるからリアリティが生まれる。かといって昭和的な哀愁を漂わせるでもなく、女子会ではめを外したり仕事先のマネージャーに文句を言ったり、いかにも平成らしい、自由な女性として描かれているのが良い。故に、男性だけではなく、女性が観ても楽しめる作品になっているのではないだろうか。

決して明るい作品では無いけれど、登場人物から滲み出る下心や愚かさにさえ人間臭い魅力が感じられ、何だか嬉しくなってしまう。池袋の夜の景色が何とも美しい。