イルーナ

君の名前で僕を呼んでのイルーナのネタバレレビュー・内容・結末

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

巷で話題になっていながら、なぜか見逃してしまっていた傑作BL?LGBT?そして純愛映画。huluで配信されていたので、拝見しましたが……
甘く見ていた。予備知識一切なしだったのもあるけど、これ本気で感想を書こうと思ったら、かなり知識が要求されるタイプの作品だ……

しかしそれ抜きにしても、この作品は本当に美しい。
年上の相手との、ひと夏の恋。透明感やきらめきに満ちた絵や音作り。
さらに美術やクラシックなどの要素などが盛り込まれ、格調高い作品です。
ちょっと不思議なのは、これだけ「美しい」作品でありながら、要所要所で不潔さや醜いもの、悪魔の象徴であるハエが出てくること。
感想をあさってみると、やはりハエの意味について色々考察されているので、色々考えてみるのもよさそうです。
あとアプリコットの使い方……直接的なシーンがなくてもこんなにエロティックな表現ができるものなんだ……

そしてタイトルの意味。恋焦がれてどうしようもなくなって、もはや相手との境界線さえなくなり、完全に一つになろうとしている状態。
とてもエロティックですが、こんなやさしく、美しい言葉で表現するとは……!しかもこれ、同性だからこそできる表現。
そういやユダヤ教のシンボルの六芒星も、三角が重なり合ってできていましたね……

やがてかけがえのないひと夏が終わり、別れの時がやって来る。
しかし、ある冬の日に「本当のお別れ」が待っていた……
作中では語られてないですが、80年代のアメリカはエイズ問題に代表されるように、同性愛者への偏見や差別が酷くなった時代。
さらに「僕の父なら矯正施設に直行だ」という台詞まである。
オリヴァーは、自分を偽らざるを得なくなったんですね。そのことをエリオも理解しているから、余計につらいです。
それでも、心から誰かを愛することができたという経験は、かけがえのないもの。
つらいけれども、だからこそあのひと夏が美しいまま心に残るわけで。

「人は早く立ち直ろうと、自分の心を削り取り、30歳までにすり減ってしまう。新たな相手に与えるものが失われる」
「だが、何も感じないこと……感情を無視することは、あまりにも惜しい」
「今はまだ、ひたすら悲しく、苦しいだろう。痛みを葬るな。感じた喜びも忘れずに」
それにしても、ラスト手前のお父さんのセリフがあまりにも素晴らしすぎる。私の大好きな『ソング・オブ・ザ・シー』といい、感情の尊さを描いた展開にはやはりグッと来てしまいます。
エリオは本当にいいご両親を持ってるよ……
昔の映画のコピーに「去年の夏は、忘れるには美しすぎる。思い出すにはつらすぎる」というのがありましたが、まさにそれを思い出させる作品でした。
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