風の旅人

君の名前で僕を呼んでの風の旅人のレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
5.0
古代ギリシャ・ローマを想起させ、恋愛とは何かを問うた作品。
人は得てして恋愛に劇的なものを求めがちだけれど、実際の関係性は緩やかに変化していく。
たとえ一目惚れしたとしても、そこから恋愛に発展するためには手順を踏まなければならない。
相手の気持ちを探り、自分の気持ちを確かめ、時間をかけて一線を越える。
この映画はその過程を丹念に描いていく。
正直それは退屈にも感じられる時間で、何かが描かれようとしていることはわかったのだが、僕は途中までそれを言語化することができずにいた。
しかしオリヴァー(アーミー・ハマー)が去った後、落胆するエリオ(ティモシー・シャラメ)を励ます父親(マイケル・スタールバーグ)の言葉で、僕はすべてを理解した。

「相手の中に自分(の半身)を見出す」

それが『Call Me by Your Name(君の名前で僕を呼んで)』というタイトルの意味であり、この映画が示した恋愛観だ。
そのことに気づいた瞬間、今まで点としてしか認識していなかったシーンが線でつながり、名伏し難い感動がやってきた。
こんな体験をしたのは初めてのことだったし、もう二度と訪れないかもしれない。
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