二瓶ちゃん

A2 完全版の二瓶ちゃんのレビュー・感想・評価

A2 完全版(2015年製作の映画)
4.5
前作を観たので今作も遅ればせながら鑑賞。

安岡卓治。

【何をどう思えばいいのかわからなくなります】

やべぇ映画。

事件のリアルタイムであれば、オウムないしアレフに向く刃もさぞかし尖っていただろうと思う。

しかし、今となって、その刃の質というものをこの映像で見ると、その刃は磨かれたものではなかったように見える。

もう、今のTwitterとかの炎上欄ってネットがない30年前はこんな感じだったのか、とか思う。

右翼がすごい。維新会の人たちはまだ寛容な姿勢をカメラの前では見せていたけど、警察にブチギレる自称紳士的なあの右翼は紛れもなく頭が悪いように思えた。これは怒りをもって断言したかった。

なぜあれに怒りを抱くのかといえば、群馬県のオウムが平和すぎるし、理想的だからだ。対話がまだまだ成立していると思うし、地域のコミュニティのために一役買っている。

それに引き換え、なんだ、オウム反対運動とは。デモ運動や立ち退き看板をやっても、それがカメラに映る途端、ものすごい排他的な匂いを感じる。そこから対話は生まれるわけがない。

厳しい言い方をするならば、祭り好きな日本人が神輿を担ぐようにして、反オウムという名の祭りに加わっているだけのように感じる。集団で群れるから力があるように見えるが、それを構成する個人個人に根源的な判断力はあるのか。彼らの魂に触れようとしたのか。

事件があって、警察が出てきて、マスコミが騒ぎ立てて、それにたき立てられた人々が不安解放のために騒ぎに騒いでいる。そんな運動さえも、恐怖からいち早く逃れたいという病を患った一種の宗教にも見える。

平和は良い。人は殺してはいけない。そんなことわかってる。ただ主張がぶつかり合うのみで、一切対話が生まれない。脱原発デモやウクライナの平和を呼びかけるデモ。そういう正論を高らかに言って思考停止する、というのはこんな昔からあったのか、という勉強になった。

映画として、後半に出てくる森監督と松本麗華と警察の会話が全てなんじゃないかなと思った。ちょっとコミカルで笑えてしまうけど、幼いながら世の中で起きている現象を俯瞰的に見ているなぁと思わされた。それでいて攻撃的じゃないし。ただ集まりたい人が集まってお茶飲んで帰るだけって、、すごい言い方。

個人的な主張が過ぎたので、以降には映画の話を。今回はあまり荒木さんにスポットが当たらない。一切、ということはないが、荒木さんの外縁を見るような感じだと思った。前回はあまりにも荒木さんばかりを観ていて退屈したパートもあったけど、今回は場面の移り変わりもあり、悪くなってしまった日本の暴走もあって、興奮しながら見れた。

圧倒的な正解がないままに進んでいく映画だと思うけど、何かを考えさせるという意味では非常に強い映画だと思った、ということでこの評価。

また、森監督のメディアに対する嫌悪もなんか感じられた。