真田ピロシキ

アンチャーテッドの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

アンチャーテッド(2022年製作の映画)
3.5
私はPS3の時代はXbox360を買ったのでリアルタイムでこのシリーズはやってなくてPS4で1〜3リマスターをやったのだけれど、これが視界不良の猛吹雪をステルスで乗り切ろうとしたらムービーで撃ち殺されたり、ワイヤーを伝って別の建物に写る場面では少し待ってムービーを見ないとワイヤーを掴めないで落下死するクソバカ仕様だったり、突然腰程度の高さから飛び降りて死ぬスペランカーになったり徹頭徹尾製作者の掌で踊らされる、そのくせ誘導が下手すぎて一本道なのに迷う酷いゲームで良い印象がない。もっとはっきり言うと嫌いで何故高評価されてるのかさっぱり分からない。だから好漢とされてるネイトもウザい奴としか思えなくて口癖の「ヤベヤベヤベ」にもうっせえわ!とドス黒い感情が渦巻く。

この映画では冒頭からそんな「ヤベヤベ」を聞かされて嫌な予感がしたが、ゲームみたく面白いと思ったネタを繰り返すセンスはないのかそこだけで安心。それでこの映画は凡百のゲーム映画にありがちなゲームを予習してない素人さんはお断り感がなくて、原作自体がハリウッド冒険映画を自分で動かすコンセプトなのもあるが、スンナリと映画の世界に入り込める。それでいながら墜落する飛行機のコンテナ渡りやヘリコプターで吊るした船上での乱闘、謎解きなどアンチャーテッドらしさは不自然になることなく散りばめられている。また『ヴェノム』のルーベン・フライシャー監督だけあって最近トレンドのハリウッド映画とは違ってどうでもいいオタク知識を充実させんとするような妙な複雑さはなくて、肩肘張らないゴキゲンさは昔ながらのハリウッド大作で実に気楽に見させてくれる。もうこの手の映画自体に興味があまりないので時々意識が逸れてたが楽しい時間は過ごせた。

映画での大きな改善点はネイトがあまり人を殺さないことで、ゲームではただのトレジャーハンターでしかないのに武装した人間を3桁殺害し、しかもそれが単調かつ長くてつまらない。挙句の果てにラスボスから「君1人で何人殺したと思ってる」と言われた日には「殺さないでクリアする方法があるなら言ってみろや!一本道クソゲーがぁ!!」とブチ切れでしたよ。しかしこの変更のおかげで映画のネイトはギリギリリアリティの感じられるキャラクターになってこっちは嫌いじゃない。映画化で改悪されたのではなくゲームの欠点を映画化によって解消されてて、ゲームを分析した上で映画にしたことが窺える。原作ゲームが嫌いな自分ですら楽しめたのだから、好きな人にはたまらないかと。見る前は原作が微妙で映画はもっと微妙な『アサシンクリード』みたいなのを覚悟してたが格が違った。SONYブランドゲームの実写化は『ラスト・オブ・アス』のドラマや『ゴーストオブツシマ』の映画が控えててこの2つはアンチャーテッドと違って好きなんだけどこれなら期待して良い?

吹き替え声優はゲームとは違うが、サリーを演じていた千葉繁が結構目立つ役である訛りの強い敵のガードマンで出てて、その辺の目配せもしっかり。こんなまともなゲーム映画が見れるとゲーマーとしては嬉しい限り。