SANUKIAQUA

君の膵臓をたべたいのSANUKIAQUAのネタバレレビュー・内容・結末

君の膵臓をたべたい(2017年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

これは、不治の病に侵されて
亡くなってしまう少女の話
ではありませんでした。

奇抜なタイトル
量産される若者向けの
恋愛映画と不治の病が
合わされた映画
という第一印象は
いい意味で覆えされました。

物語の紡ぎ方に驚きを覚え、
そしてなるほどと思いました。
まずヒロインが明るく
「私は、死にます。」と
宣言することに驚きました。
そして、12年後を同時進行で見せることで
二人の結末と、残された仲良し君が
どうなっているのかということも
全部見せてしまっていることにも
驚きました。
つまり、どうなるのかは
最初からわかっているので
どうなるのかを追っても意味はありません。
なら、観ている人が観るのは
なぜそうしたのか、何を感じているのか
という心を察すること、ではないか
と思いました。

タイトルの意味もすぐにヒロインが
種明かしをしてくれます。
そこで誰が誰に対して
タイトルのことを思うのか、言うのか
いつ言うのか、に関心が移りました。

ヒロイン桜良の仲良し君を戸惑わせ
無理矢理自分のペースに引き込む明るさに
無理してる感があり
彼女が死ぬということ前提として観てるので
この娘はここにいたるまで
どれだけ葛藤して今もそうしてるのだろう
と思いながら観ました。
相手の中に残りたいと思いながら
残って重しにもなりたくない
という微妙な思いが
彼とのゲームのやりとりの中で
冗談にまぜて本音が垣間見えました。

仲良し君が何故ここまで頑なに
他人に興味がなく他人を拒むのか
一度も姿を見せない父親の影響が
あるのでしょうか。
クラス1の美少女に迫られても
なびかないのは、逆にすごいなと思いました。
それだけに、最後のくだりがグッときました。
彼がいたことで桜良も救われたと思うけれど
一番救われたのは桜良の両親ではないでしょうか。

この作品の肝のシーンは
桜良が仲良し君に
君と私の一日は同じ価値なんだよと語る
あの流れのシーンではないでしょうか。
私たちは当たり前に明日が来る
と確かに思いがちですが
事故や災害でいつ命が果てるかなんて
わからない。

もし桜良が日記をつけていなかったら
残されたみんな苦しみを抱えて
生きたかもしれません。
一日一日を大切に生きる、
仲良し君に君の生きる意味はなに?
と聞かれた桜良の答えが、
そうだよなという素晴らしさと
切実さ、誠実さに溢れていました。
それだけに楽しみに待ち合わせ場所に
出かける笑顔が眩しすぎました。

メールで、手紙で同じ言葉を送り
互いに気持ちが通じたラストシーンが
秀逸でした。

これは、精一杯生きた少女の話
でした。
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