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君の膵臓をたべたいのjonajonaのレビュー・感想・評価

君の膵臓をたべたい(2017年製作の映画)
3.4
せっかくアニメ版を見たので実写はどうなってるのか気になって流し見。

大きな違いは先生になった主人公が現代パートから過去の学生時代を振り返るという形で物語が展開していく事でしょうか。
その功罪として感じることが多かった。あとはアニメと同じ。原作小説はどちらなのかも気になるところですが、この映像化という部分ではアニメのがクレバー。最近クレバーという言葉にハマってるアホです。

○GOOD
・まず、物語全体を過去に落とし込んだことで生じた良い点を挙げると…冒頭のエモさですかね笑。先生がずっと行かなかった図書館に入って、本棚の隙間に死んだ彼女の亡霊を見て追いかける。そこから過去を追想していくストーリーが始まる。
この始まりは素敵な雰囲気でした。かつての青春を思い起こす…ってのはやっぱりいいんで。やりたくなっちゃうんだろね。

・プロットがそもそも良い。原作の勝利

・主人公の男の子の声がめちゃ渋い

・浜辺美波かわいい

・主人公が涙するラストだけはアニメ版よりリアリティがあって良かった。アニメだとちょっと泣き声が大袈裟に感じたがこちらは自然。

○bad
・展開を全て過去にした罪の部分ですが、冒頭のエモさと引き換えに物語全体を鈍重にしてる感は否めない。
誰も興味のない現代の生徒との対話から追想…という形式なので、合間に知らん生徒の悩み相談を受けたりしてて『いっらんいらん!イラン!あっソォーーッレ!』ってなった。
やりたくなる気持ちは凄く分かります。多分念頭にあったのは『これだけのベストセラーだし幅広い年代層に見てもらえる映画にしたい。若者以外も見れるように大人の時代から過去を振り返ることにしよう』て事じゃないかな?
ほいで、そこに『テーマ的にも矛盾しない筈だ!だって彼女と出会った事で人と心を通わせることの重要性を理解した主人公が、時代を超えて自分の生徒やかつてのクラスメートに想いを伝えれるように変化するんだから!』とかね…。
ただ、その結果、別の違和感が生じてて。(小説原作がそうならある程度仕方ないけど知らん)自分のことを敵視してた彼女の親友と、何年も音信不通でようやく現代パートで繋がる…っていうのは、やっぱり遅すぎないか!!ということですよ。
彼女から学んだものが届くのが遅い!逆に心に届いて涙する描写が過去編にある分余計、今更かい!不自然!ってかんじる。

・ナレーションの不要さも感じる。アニメでもナレーションは度々あったけど、ここぞという所に挟む程度。今回の現代から物知り顔で挟み込まれるナレーションにはちょっと白けさせられた。
彼女が死んでから入るナレーションがすごく邪魔だった。当時の青春から一気に地獄に叩きつけられるような絶望感への観客の没入を阻害してるだけ。

・彼女との別れ、涙の真実。そこに物語のラストスパートが置かれてるアニメ版に対して、実写はそのあとに15分強続く。
余計。長い。現代パート不要。
アニメ版の『他者とのつながりへはじめの一歩』の感動に対して、実写は『かつての思いを伝える』?なのかな。うーん、アニメのがテーマと一致してる気がする。

・君の膵臓を食べたい、という言葉を最後までヒキにした実写版。ネガティブ思考で他人の見る目を想像する主人公が相手への愛情を伝える言葉、その同じ言葉を同じ時に思っていたエモーション。そこを引っ張りすぎててアニメと比較するとかなり弱まってた。初見なら気にならなかったかも、

○感想
映画となると興収をある程度欲張りたくなってストーリーの解から外れる、ってことは良くあると思いますがまさにそれ。
ただ、良いところも沢山あって素敵な青春映画だと思います。原作の味があるしね
同じ物語でも語り口でこうも印象が変わるか、とかなり良い勉強になりました。
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