湯林檎

ヨーヨー・マと旅するシルクロードの湯林檎のレビュー・感想・評価

4.7
なぜ音楽をやっているのか、なぜ音楽(芸術)が好きなのか…自分の中の混沌とした感情を表現してくれたかのようなカタルシスを感じた。

自分が音楽を愛している理由といえば、端的に言うと色々な音を聞いていくことが好きなだけだ。
そんな感覚的で抽象的な自分の考えを見出そうとこれまで様々な本や映画を通して考えてきた。そう言った意味ではこう言った音楽を追求している方々のドキュメンタリーは非常に感慨深いものであり、本作でのヨーヨー・マ達の言葉が私の求めていた考えを代弁してくれたような気がした。

出演者の多くは戦争や内乱を経験し、親友を失った人や家族と何年も会えていない人様々な事情を抱えていた。
また、身を守る為に音楽活動をしている人もいた。
いつの時代も音楽と戦争は隣り合わせの存在で皮肉なことに戦争や紛争が起きることによって音楽を含む文化が発展しきたことは認識していたものの、本作で実際に過酷な状況下で生き抜いてきた人々の話を聞くのは心底辛かった。
だが出演者全員に共通して感じたことは皆自分の祖国の文化に強い誇りを持ちながらも自分の果たすべき目的を持って音楽活動をしていてすごく誇らしく、自分も見習いたい部分があると思った。
実際ヨーヨー・マが途中で現地の中国人の音楽家達に対して"練習することに目的や理由を持つこと"という風に指導していた。これは普段の仕事に直接役立つわけではない芸術活動でもきちんと目的意識を持てば日常生活や人生設計の様々なことに役立つアドバイスだと思えた。


⚠️以外ネタバレなので気になる人は注意してください


ここから先は出演者の心に残った言葉を記録して自分なりに考えをまとめたい。

(ヨーヨー・マ)「文化は終わらない〜取り引きを成立させるビジネスとは違う〜物事を生かし続け発展させるものだ。」
「伝統が生き続けられるのは創意があってこそだ。伝統が発展しない限り当然衰退の一途をたどる。」
(このプロジェクトの目的について)「演奏や音楽について学んだすべてのことや音符の間を読むことで文化の重要性を再確認できる。」
(イラン出身のケマンチェ奏者ケイハン・カルホールについて)「私たちは別々に生まれた双子だ。私達の選択は同じです。」
(ウー・マン)「音楽の世界は狭いわ、何かに興味を持ち見つけたいなら注意深く見回せば必ずすぐそばにある。」
(ケイハン・カルホール)「政治的な独自性は続かない〜だが文化は残る。文化の一部である言語や音楽も継承する。」
(梅崎康二郎)「芸術とは自分の可能性を切り開くものだ。可能性は希望につながる。希望が必要だ。」
(クリスティーナ)「文化的アイデンティティーが人を左右する。その善し悪しを判断するのは自分。」
「他の文化から学ぶことで自分の文化をより発展させられる。」

音楽(芸術)とは何だろうか、個人的には今を生きる上で自分を形成する手段の1つなのではないだろうか。
湯林檎

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