Kuuta

満月の夜のKuutaのレビュー・感想・評価

満月の夜(1984年製作の映画)
4.0
束縛の強い恋人レミとの同棲生活が辛くなったルイーズ(パスカル・オジェ)。郊外にある自宅と別に、パリに部屋を借りて別の男と遊んでみたりする、というお話。昼間の現実と真夜中の非現実、二つの世界を行き来するが、満月の夜にそれが上手くいかなくなる。

左へのパンで青い色の集合住宅(自宅)を収めたファーストショットから良い。ぼやんとした灰色の画面の中で、白と黒、青と赤が強調され、鏡による分裂を交えつつ、ルイーズの二面性が示される。

電車移動、飲み会で出会った男とのツーリング。いずれも「流刑地」であるパリで自由を求め、好き勝手に動く「横」の運動だ。「海辺のポーリーヌ」的な、虚実がごちゃ混ぜで、男女が軽やかにセックスする世界と言える。固定画角での長回しの会話と、それを打ち破るカットバックによるコミュニケーションが描かれる。

一方で、同棲している家には階段がある。「縦」の運動が、固定的な人間関係を作る。「もう一つの世界」が現れ、それを失うことになる終盤の展開は、自業自得にも見えるがとてもよく出来ている。異変に気付き、一階と二階でそれぞれ立ち尽くしたルイーズの真っ黒な影。二つの世界のどちらにも居場所のなくなった姿なのだろう。

電話やトイレの手拭きタオルで見られる回転運動は、二つの世界を繋ぐものなのだろうか。海辺のポーリーヌでも、レコードが印象的な使われ方をしていたが。

ラストはちょっと声出るくらいカッコよかった。青い家を去るルイーズを右のパンで捉える冒頭との対比。赤い車と白い車が画面を横切って、青い家との関係を断ち切っている。

という訳で良いシーンは山ほどあるのだけど、「ポーリーヌ」同様、どうしても長い会話が苦手。80点。
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