武士の刀を使った戦いでも、馬に乗り颯爽と登場する姿でもなく、算盤を弾き加賀藩の御算用者として働く姿を描く。もちろん絵面の派手さはないが、人間味溢れる描写が森田芳光らしい部分だった。
社会的なイメージとは違う生き方で、今でいえば公務員のような働き方をしていた武士がいたというだけでも面白いが、ただの設定的面白さだけでなく、御算用者としての苦悩や、思想がみえてくるのがおもしろい。
また、家庭の借金返済に一家を挙げて奔走する姿や家族内の変化、それに合わせるように、藩内や時代の動乱に巻き込まれて行く様を重ねて行く。その中には親子の関係であったり、夫婦の関係であったりが根本にあるという面白さがあった。