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牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版の1000のレビュー・感想・評価

5.0
2018/04/09
オールタイムベスト。遅ればせながらDVDをポチったので、一年ぶりに再見。
「映画館で観ないと後悔する」なんて書いたが、改めて自分のペースで見直すのも悪くないな。

小津風の構図も相まって、登場人物たちの"フレーム"を強く意識した。フレーム同士の結合を信じた小四と、隣接以上の関係を拒絶する小明。理想主義と現実主義が凄まじい相克を展開した末、両者はともに破滅する。
つまるところ小四はガキで、大人な生き方をしている小明を認められなかった、っていうまとめだけは許しがたいな。クールに生きることと、正しく生きることは、まったく別の問題だ。僕はずっと小四の味方でいたい。

前回度肝を抜かれた「壁の影で会話するシーン」をなぜか見つけられなかったので、また観る。


2017/03/13
『牯嶺街少年殺人事件』のリバイバル上映は、2017年の映画史における"事件"だ。4時間弱というギャグみたいに長い映画をこんな慌ただしい時代に蘇らせたのは、まさに愛と信念による偉業と言わざるをえない。関係者各位に拍手。

小四と小明のボーイ・ミーツ・ガールを軸に描かれる、60年代初頭の台北社会。マフィア並に組織化された中学生たちの抗争、暴力、殺人。まさに台湾版『シティ・オブ・ゴッド』。実話をもとにしてるってんだから、笑えない。
ひょんなことから”ボスの女”(14)に手を出してしまった少年(14)。”ボスの女”(14)ってなんだよ。住む世界違いすぎてヤバい。

エドワード・ヤンお得意の定点ロングショットが各所で炸裂してます。ただ眺めることしかできない映像が、決して物語の当事者にはなれない鑑賞者の"鑑賞者的性格"を強めている。
壁にぼんやり映った登場人物の影だけを写すカットなんかは、ぶっ飛びすぎてて顎が外れそうになりました。これだけの才能、センスを持った監督が、たった数作を遺して亡くなったのは、本当に悲しい。

お昼をまたぐ上映だったので、終盤、あちこちから切実な腹の音が。みなさんお疲れ様でした。人体って、4時間トイレにいかなくても平気なんですね、意外と。
この作品を劇場で観られるというのは、ぶっちゃけ21世紀の奇跡です。映画を観る楽しみの全てが詰まっています。普段あまり言わないセリフですが、”映画館で観ないと絶対に後悔します”。時間のある方は是非。
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