こまち

羊の木のこまちのネタバレレビュー・内容・結末

羊の木(2018年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

胸がざわざわする。何かが心に引っ掛かる。

太田さん(優香)の人との距離の詰め方とか、杉山(北村一輝)の不穏な笑顔とか。
途中、「人が肌で感じることは結構正しいものだ」という台詞があるけれど、そういう「肌で感じる違和感」の表現が上手いなあと思う。

でも、「信じていいのかわからない」最大の相手、心をざわざわさせる宮腰が結局死んでしまったのが残念だった。
義憤に駆られた誰かに殺されたわけでもなく、誰の手も汚さずに「神的なるもの」に抹殺される。
そんな退場の仕方にがっかりした。単なる懲悪ものに見えてしまう。
個性的な元受刑者が6人もいたのだから、罪とか罰とか、償うということや赦すということがどういうことなのか、何かしらの考えを見せてほしかった。
普通の人・月末にもっと考えてほしかった。
私がテーマに期待しすぎた。

「羊の木」って何なのか?
よくわからないけど、昔からあるものらしい。
誰も説明してくれない。
まるで「人を殺してはいけない理由」みたいだなと思った。
よくわからないけど、昔からそういうものとしてある。

Death is not the end.

栗本さん(市川実日子)が死んだ生き物を土に埋めるのは、取り返しがつかないものを取り戻そうとする作業なのかもしれないと思うと、悲しい気持ちになった。
彼女の孤独が悲しい。

ラストの口パクラーメンは、 吉田大八監督によれば「真っ黒な世界が、ふとグレーくらいに感じられる点」。
月末も文も、「その後」を生きていかなければならないから。私たちも。

Death is not the end.
こまち

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