ノラネコの呑んで観るシネマ

羊の木のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

羊の木(2018年製作の映画)
4.0
社会実験の一環として、仮釈放中の6人の元殺人犯を、新たな市民として受け入れた過疎の街。
人は、人を信じきることが出来るのか、罪は許されるのか。
テーマ的には、李相日監督の傑作「怒り」を思わせるが、漫画原作のこちらは良くも悪くも分かりやすく、多分に寓話的。
印象的なタイトルの通り、死体から木が生える神話・伝説は世界中にある。
しかし、実際には植物から動物が実る様に、殺した命が再生することは無い。
あり得ない希望は、果たして結実するのか。
なかなか興味深い話だが、最初に物語の型ありきで、虚構がなかなか現実を突き抜けて行かない。
やたらエロい、優香の恋愛体質を超えるリアルが見えないのだ。
錦戸亮演じる市役所職員の主人公は、観客の視点となる役割だが、元殺人犯らに比べて圧倒的にキャラクターが弱い。
彼のアンチテーゼである、松田龍平のホラー演技に完全に喰われてしまった。
吉田大八監督だけあって、さすがにアベレージレベルは軽々クリアしているが、原作のイマジネーションを超えてはいないかな。