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ムーンライトのmitakosamaのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
3.7
ああ、わかるねぇ。なんかわかる。この孤独感。
主人公ほど特殊な人生でなくても、誰もが持つ普遍的な“人との距離感”を凄いよく表してる。
この黒人の青年に多くの人がシンパシーを感じるであろうことは、この物語が本質的な孤独の領域に達しているからであろうて。

物語は3部構成。少年期・学生時代・青年時代。

少年期は、たまたま知り合った大人が、自分の親にもクスリを売ってる売人の元締めだった話。
イキナリ重い。
でもこの売人のオッサンがなんかいい奴なんだよ。泳ぎを教えてくれたり良くしてくれる。
気まぐれからなんだろうが、子供に対し情をもってしまった悪い大人。
でも子供目線からのストーリーなので、程よく距離感を保った映像になる。子供を可愛がるのが売人であることに贖罪の気持ちがあったのか無かったのか、それは見る側に委ねられる。

モヤシっ子学生時代は母親がクスリに狂いすぎてた挙句、学校でもメチャくちゃイジメられる。
友人と禁断のキス。そして裏切り。自暴自棄。

マッチョな青年期では、昔の“親切な大人”の様にクスリの売人に。母親は施設で更生し和解。
かつての友人との再会。

マッチョワルになったのでかつてのイジメっ子をボコりに行くのかな?て思ったがそれは無かった。

何もかもが感情的で感傷的だが、アホみたいに嗚咽を漏らして泣いたりしない。終始淡々としてる。
それがまた「この孤独感は他人事でない」と感じさせる要因だわ。

ラストは唐突だが余韻もある。
孤独を埋めるものは何もない。でも不思議と悪い気がしない。ただ青き月明かりだけが優しく寄り添うのだから。そんな映画。
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