しの

スウィート17モンスターのしののレビュー・感想・評価

スウィート17モンスター(2016年製作の映画)
3.9
自分だけが不幸で、周りはみんな敵。何をしても上手くいかず、世界との付き合い方が分からない。そんな多感な少女の拗らせ具合を何とも的確にパッケージ。誰しも、もう世界の終わりだと思うことはある。そんな時、世界はそんなに悪い場所じゃないと思い出させてくれる。

キャラクター造形が素晴らしい。主人公が関わって成長していくための人物配置が巧妙かつ自然。予定調和でステレオタイプな部分も、拗らせ少女の空回りエネルギーで突っ走る小気味よさと、的確に人間の本質を捉える視点により全く気にならない。故に愛らしくも普遍的な一本に。

「着地点が明白なので、そこへ辿り着く過程を楽しむ作品」というのは多々あるが、これはその成功例だ。着地点どころか、人物が出てきただけで話の展開すら容易に察せる。しかしそれでも面白い。それは前述のように、主人公の牽引力でグイグイ観せつつ、随所に共感させ本質を突くポイントを仕込む巧みさがあるからだ。ちょっと台詞で語り過ぎなきらいはあるが、非常に上質な作品だ。

思春期に多かれ少なかれ経験した「不安定さ」に懐かしさと共感を覚えつつ、それをただ「若き日の思い出」に終わらせないのが素晴らしい。大人になっても、ふとした事で厭世的になり、何もかも空回りするような感覚に陥ることは多々ある。この作品の前では、誰もが皆「スウィート17モンスター」だ。暴走し、自爆し、最後には世界の温かさに触れる。悶えるようでとても大切なそのプロセスを再体験させてくれる一作だ。
しの

しの