MikiMickle

ジェーン・ドウの解剖のMikiMickleのレビュー・感想・評価

ジェーン・ドウの解剖(2016年製作の映画)
3.5
バージニア州グランサム。
とある一軒の閑静な住宅で一家殺害の事件がおきる。地下室の土の中から見つかった身元不明の美しい女性の遺体。(身元不明の人の事をアメリカではジョン・ドウと呼びます。女性はジェーン・ドウ) 彼女と一家の関係性はわからず。

その解剖を任された父と息子。代々続く小さな町の解剖医 兼 遺体安置所。
ジェーンドゥの遺体は美しく、死後数日経っているのにも関わらず死後硬直も死斑もない。手足の骨折と、切られた舌と、***以外は外傷もない。

彼女の死因は何であるのか。解剖を進めていく。
肺や内臓の激しい損傷…
外的には破損も傷もないのに何故?
腸の中にあった不可解な物体は何?…

そして解剖途中でおこる怪奇な現象…
この遺体はただの遺体ではない。
危機を感じて外に逃げようとするが、暴風雨の為に出口を塞がれてしまう…通信も出来ずに、
地下の遺体安置所に閉じ込められた戦慄の一夜が始まる…


まず、父と息子という関係がたまらないのです。息子想いの父(ブライアン・コックス)、父想いの息子(エミール・ハーシュ)。師匠と弟子という関係もありつつ、お互いに無いものを補う関係で、素晴らしいバランス。
故に、「死なないで〜‼」という感情移入がわき、ハラハラ‼
一方で息子の探究心は謎解き要素を増長させていく。

また、解剖を通して謎が解かれていくのだけれど、その解剖シーンもしっかりしたもので、これをグロいと思うのか素晴らしいものだと思うのかは人それぞれ。私はもちろん後者。
それほどグロくはないけれど、美しい裸にメスが入るのにはドキッとさせられる…
リアルな解剖と解明部分が実に面白いが、
決してそれだけでない。

徐々に判明してくるジェーン・ドウの過去の事実。謎が解けた時にはなるほど‼と思いつつも、切なさを感じるものでもあり… 怖さと悲しさが融合されていく…

ジェーンの全裸の遺体は美しく妖艶。陶器のように透き通る白い肌。まるで生きているかのような柔らかさ。灰色の淀んだ瞳。汚れのない美しさと裏腹に、何が彼女に起こったのだろうか…
美しい死体はネクロフィリアの人にとったらたまらないのだろうか? と思ってしまうほど… しかし、すきっ歯がやけに可愛い(笑)

この映画は、西洋的なびっくりさせるような恐ろしさではなく、非常に日本的なホラーといえる。悲しみと念と……
そして、解剖という場を通して、前半の謎解きミステリーと、後半の逃げ場のない密室ホラーが融合した作品。
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