Kuuta

アンダー・ザ・シルバーレイクのKuutaのレビュー・感想・評価

3.8
アメリカンスリープオーバーでも感じましたが、もっとエモい、ストレートな話に出来るのにあえて突き放すような作劇。今作のような「カルト風」映画だって、ポップカルチャーの一つとして淡々と消費される宿命にある今の時代を受け入れるような、90's的な、ポストモダンな諦念が刻まれていると感じるし(自身のデビュー作を早くも引用してしまう皮肉)、その虚しさの中でなんとか未来に繋がる映画を作ろうと名作の引用をマニアックに繰り返す様はちょっとだけタランティーノを連想しました。

失恋なり、挫折を経験した人、寂しさや虚しさを抱えたまま生きようとする人間ほどポップカルチャーに入れ込むんだと思います。一種の逃避ですし、そうやって欠落したままサブカルに耽溺して死んでいった亡霊がシルバーレイクにはいっぱいいるんでしょう。この映画だって、犬好きの元カノの幻影を追っただけのボンクラの話とも言えますし。文字通りハリウッドの画面の中に消えたサラと青いプールに別れを告げるラストは意外とお行儀が良くて、この辺もアメリカンスリープオーバーと同じ「冷めた目線」を感じます。

無数の小ネタにほとんど知識が付いていけませんでしたが、ラストのR.E.MのStrange Currenciesは私的に◎な選曲。確かに主人公の心境がはっきり出た歌詞だなあと。

暗号解読とまでは言わなくても、好きなミュージシャンの歌詞カードを穴が空くほど読み込んで、その音楽に心が救われる経験って多くの人がしているはずですし、あのピアノおじさんの悪夢っぷりが個人的には一際強烈でした。ポップカルチャーが人の心を無意識にコントロールしているのなら、主人公も、こういう映画を見てハマる我々も、現実と虚構の区別がどんどん付かなくなって時間を浪費していってしまう運命にあるんでしょう。

正直ストーリーに関しては何でもいいやくらいの気持ちでのんびり見てましたが、デザインに色合いにカメラワークに、140分間目が飽きない映画でした。幼少期の思い出=青い表紙のプレイボーイ紙(Nevermind風)と同じアングルで倒れた女の子が血で赤く染まって消えていく場面なんかすごい良かったです。終盤の山登りでは青と赤の服を着ており、文字通り大人と子供の境界に主人公が立っている?マリオにも見えるしスパイダーマンの色でもある。ライリーキーオの華やかな暗さが素敵。もう一回見ようかな…。75点。
Kuuta

Kuuta