けまろう

ニーゼと光のアトリエのけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

ニーゼと光のアトリエ(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

『ニーゼと光のアトリエ』鑑賞。昨年のTIFFグランプリ作品。精神病患者の治療を非人道的に行なっていた戦後精神医療(ヒトの社会性を担保する前頭葉を切除するロボトミー手術が引き合いに出される)の中にありながら、あくまでも患者の主体性を重んじ、内面からの行動療法に拘ったニーゼの奮闘記。アートを通じて患者の精神世界を紐解き、成長を促す療法は、まさに治療室ではなく「アトリエ」である。図形を示さなかった当初の絵が、徐々に幾何学的図形を示し、最終的には具象的なイメージにまで昇華していくさまは、ヒトの精神発達過程を見ているようでもある。
アニマルセラピーの導入で更に患者たちの表情は豊かになるが、何者かの仕業で動物たちが虐殺。怒りに身を任せた患者が看護師に暴力を振るい、ロボトミー手術で感情を剥奪されるというエンド。犯人は裁かれず、後味の悪いままエンディングへ。慟哭するニーゼの姿は雄々しくも哀しみに満ちる。
光の差し込む庭が象徴的に映されるが、患者の心に差すニーゼの温もりの暗示だろう。最後にご本人登場のセミドキュメンタリー形式で、もう疲れたと言って腰をかける高齢となったニーゼ本人の映像には胸を打たれる。実際の患者たちの元気な姿には思わず涙が溢れた。
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