ワイダ監督の遺作という事で、過去作引っ括めてスタンディングオベーションを送りたい。本作の主人公ストゥシェミンスキ氏がどうにもワイダ監督と重なってしまい、どんより倍増である。
第二次世界大戦後、ソ連支配下のポーランド。この時代に執着し、様々な視点から描いてきた監督作であるが、その締めくくりはポーランドの芸術家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキ氏の目線で描かれる。スターリン主義に基づき〝社会主義リアリズム〟しか認められなくなった芸術。「あんたら芸術の意味分かってるのか?」と反抗したばっかりに、ストゥシェミンスキ氏は全体主義の〝反逆分子〟と見なされ、生きる術を奪われていくのである。
大学教授をクビになっても彼の自宅に通い続ける教え子達との関係性は良かったが、彼の一人娘ニカとの関係がねじ曲がっていて中々エグい!(父親譲りで只者ではない雰囲気)彼女もまた幼いながら〝一人〟激動の時代を生きているのだ。このニカを主人公にして映画一本撮れそうである。
エンドロールに突入しても溜め息が止まらない、、本作に限らず、監督自身の〝残像〟はポーランド映画ファンの目にいつまでも残り続けるに違いない。