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オリエント急行殺人事件のシネラーのレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
3.5
主演兼監督ケネス・ブラナーによる、
言わずと知れたアガサ・クリスティの
名作『オリエント急行殺人事件』の
映画を初鑑賞。
推理小説として有名なだけに
大筋は知っている状態だったが、
それでも楽しめる古典的ミステリー映画
ではあると思った。

名探偵エレキュール・ポアロは
休暇でオリエント急行に乗車するも、
そこで起きた殺人事件によって
13人の容疑者達と相対する
内容となっているが、
豪華俳優陣によるミステリーの古典は
観ているだけで楽しめた。
又、節々に登場人物の動向に合わせた
長回し場面が見られ、
そういった絵面の臨場感も良かった。
列車内でのポアロや容疑者達との
やり取りには情景と相まっての
お洒落さも感じられ、
閉ざさた列車内と冬景色が良かった。
物語としても事件に対する
謎解きとは別に、ポアロの善悪観が
事件を通して成り立たなくなるという
葛藤が結末までで描かれていて、
殺人に対して二言論でしか
考えていなかったポアロの最後の台詞は、
何とも言えない敗北宣言に思えた。

気になった点としては、
容疑者の人数が多い為に人の顔と名前が
一致せずに難しく感じられた。
又、列車が雪崩によって脱線するだが、
その場面が明るさまなCGで
それまでの雰囲気に水を差す部分だった。
加えて、独特なカメラワークによって
証拠物品が見づらいと思う部分もあり、
ただの会話劇で状況を理解する場面が
多いと思わない事もなかった。
そして、事件の結末に関しては
現代的な考え方では賛否あるが、
劇中での殺人が新たな殺人を生む
という考え方では、本件から別の事件が
生まれてしまうと考えられてしまい、
個人的には否定的な結末だと思った。

あまりポアロというか
クリスティの小説は読んでいないが、
(『そして誰もいなくなった』
『ABC殺人事件』位)
それでも知っている位に認知される
複雑に入り組んだ大胆な結末は
やはり原作の力だと思った。
過去の映画作品や
日本リメイク版も観てみたい。
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