JunIwaoka

パリ、ピガール広場のJunIwaokaのレビュー・感想・評価

パリ、ピガール広場(2016年製作の映画)
4.5
2016.10.29 @ 第29回東京国際映画祭

観光客が知る華々しいパリではなく、フランス映画が描く陰鬱としたパリでもない。そこに生きる彼らが目にするありのままのパリ歓楽街、ピガール広場。ヒップホップグループのメンバーが監督でどんな映画になるのかなって楽しみにしていたら、本当にそこで暮らしているかのような、荒削りで生々しいストリートの生き様。レダ・カテブのダメさ加減のセクシーさに惚れ惚れしながらスクリーンに釘付けで、こういう映画を観たかったんだよな。
移民系フランス人のナズが出所した夜から始まる。旧友といつものように呑み、街を徘徊するなかで感じる疎外感。2年という長くもなく短くもない時間の経過によって、すれ違ってしまったものを憂いながらも、ここでに留まる。「パリの暮らしは疲れた。」と穏やかな暮らしを望む兄と、共同で出資した店を巡り確執を生もうとも「ここで成功したい」と固辞して、生まれ故郷をもたないナズがなにを失おうとも他にいるべき場所はないんだろうな。最後映画的にありきたりなエンディングにも出来たはずが、この街で何よりも大切な場所を示すことに、監督の真髄を感じた。
JunIwaoka

JunIwaoka