JunIwaoka

ラストレターのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
4.0
大好きだった頃の岩井俊二 is Back!! と言うのが率直な感想。PiCNiCやLove Letter、4月物語を観て、その繊細さと美しさに胸を撃たれたときからだいぶ月日が経ってしまったせいで、前作がまったく分からなかったから期待はしないでおこうと心していたら、期待以上のものを見せてくれた。ここ数年、デプレシャンが撮った「そして僕は恋をする」の続編がよかったように、名刺代わりとなる代表作を再解釈することは悪くはないね。

葬儀、図書館、坂の上にある家。それこそLove Letterを想起するシーンを散りばめながら、軽いタッチでテンポよく進む。未咲の不在を中心とした渦に、止まっていた時計が回り始めて、蘇る思い出の美しさがやりきれない現在の虚しさに胸締めつける。初恋のその恋に落ちる瞬間のシーンはさすが岩井俊二様と言うしかなく、誰もが心の隅に仕舞った記憶を恐れずに大切に描き続けているのだと感心した。誰もいなくなった古い校舎という青春のシンボルで見つけるものが、無理に一歩前に踏み出すのではなく、ようやく成就する想いであって素敵だった。これをファンタジーと呼ぶのは容易いが、歳をとった岩井俊二だからこそが描くことができる話だと思った。
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