台湾映画のナイター撮影は何故こんなにも“キマっている”のか。楊德昌の作品は特に顕著だ。
台北の夜を彩る外資のネオンサイン。
眩いばかりに煌めく「中華民国万歳」の電飾。
迪化街の煉瓦造建築を照らし出すヘッドライト。
どれも嫉妬してしまうほどキマっている。光と闇の切り取り方、フレーミングが抜群に上手い。感嘆する。
※それにしたって富士フイルムと日本電気(NEC)のアレはズルい。まさに絶好のロケーション。魔法とでも言うべき奇跡的なカットは王家衛とクリストファー・ドイルのコンビでも撮れなかったんじゃないか。
道に迷いながらも未来に生きようとした女と、知らず知らずのうちに時代の変化から取り残されていった男。
高度成長が齎した高層ビルの乱立と、その下であてもなくバイクを走らせる次世代の若者たち。
都市の記憶も、人と人の繋がりも、街の灯のように儚いものなのかもしれない。そんなことを思った。