昨年、日本で公開された海外作品の中でも特に印象に残った1本。個人的には2017年の最優秀ラストカット賞だと思う。エンドロールを迎えた瞬間の静かな余韻と、やがて込み上げてくる温かな感情は筆舌に尽くし難い>>続きを読む
渇きと潤い。
静物の美と人間の魂。
着水の一瞬と水面に揺らめく月影の永遠。
熱く、切なく、そして優しい。叙事詩的SFという一言ではとても片付けられない。片付けたくない。
石井聰亙がタクトを振り、笠松>>続きを読む
幻想的なモノクロームの画面に浮かび上がる新高とトミ子の“顔面”が観る者を挑発し、轟音(バスと汽車、そして土砂降りの雨!)の中の沈黙、静けさで男と女の心情を雄弁に語る“音”の映画。
無表情を映すだけで>>続きを読む
良い映画だ。伝記映画として大変正しく、そつがない。
同じベッドで眠ったり、時には感情的になって声を荒げたり、ただ黙って愛する人のそばにいてあげたり……。
何気ないやり取りの数々がスクリーンに確かな“温>>続きを読む
安心と信頼のイーストウッド印、ではある。
記憶に新しいテロ事件を基にしているだけに構成や結末は変えようがないし、オマケに今回は当事者をキャスティングしているというのだから相当の制約があったことだろう>>続きを読む
愛は憎しみに勝る、と一部の人たちは言う。そうなのかもしれないし、そうであってほしいと自分も思う。
KANも“必ず最後に愛は勝つ”と歌っているし。
では、歪んだ愛と不器用な愛が同じリングに上げられ、否応>>続きを読む
なんと愛くるしい。ストップモーション・アニメーションはこれほど豊かな表現力を持ち得るものなのか。
アナログ特有の温かみ、味わい深さは筆舌に尽くし難い。最新3D技術との融合、高水準の活劇性で魅せた『K>>続きを読む
延々と繰り返される男女の禅問答的ダイアローグに「まいったなあ……」と思いつつ、何か琴線に触れる部分があるだろうと刮目すること小一時間。
劇中に登場するダンナの妹の言葉を借りれば「何が言いたいの?」と>>続きを読む
立て板に水のような進行で繰り広げられる導入部の設計が見事。観る者を一気に映画世界へ引き摺り込むストーリーテリングの上手さ、巧みさは驚異的ですらある。各国映画祭でこれだけ脚本が評価されているのも納得。>>続きを読む
成瀬巳喜男にしては意外なほど劇的(ご都合主義的)な着地ではあるが、人情の機微を無駄なく的確に切り取り、芸道モノとして、そしてメロドラマや親子の物語として綺麗に昇華させているところは流石の一言。
喜多>>続きを読む
「シャマランを見習え」
と、鑑賞直後に心の中で呟いた。
そりゃあ、作り手にとってリキが入るのは終盤に用意されたあのプロット・ポイントなんだろう。細かいカットを重ねてみたりして、映像的にも十二分に趣>>続きを読む
台湾映画のナイター撮影は何故こんなにも“キマっている”のか。楊德昌の作品は特に顕著だ。
台北の夜を彩る外資のネオンサイン。
眩いばかりに煌めく「中華民国万歳」の電飾。
迪化街の煉瓦造建築を照らし出す>>続きを読む
猥雑な背景。くすんだ色合い。定位を良しとしないカメラワーク。らしさ満点の映像で綴られたフィリピン社会の地獄巡り。
貧困の地獄と汚職の地獄は地続きであり、どちらの地獄でもモノを言うのはカネである(たと>>続きを読む
タクシーという箱庭を誂えてまで持論を展開したかったパナヒ先生の意地と執念がひしひしと伝わってくる。体制に蹂躙される映像作家の“現状”を抽出し、物語として昇華させた手腕は見事。
ただ、大変に意義のある>>続きを読む
しがない盗っ人稼業で生計を立てる孤独なパーマ野郎(この男、序盤の好感度は皆無である)が善行に目覚めていく道程を描いたアクション佳編。
超絶美人ともフツーとも言えない絶妙なルックスのヒロイン(イレニア>>続きを読む
森田芳光の『家族ゲーム』を初めて観たときのような感覚。浮遊感、とでも言うべきか。ちょっとズレた構図といい、独特な編集のリズムといい、なんとなくクセになりそうな妙味がある。これはこれで悪くない。
開巻>>続きを読む
極東のちっぽけな島国の伝統文化、民間伝承に対する愛とリスペクトが画面いっぱいに詰め込まれている。
竹取物語や富嶽三十六景、相馬の古内裏、小泉八雲『怪談』まで、お馴染みのモチーフを存分に(ある意味で過剰>>続きを読む
ドラマとしても映像としても見応えがあったのは第3幕。意中の人に手を取られながら踊る場面で醸成される多幸感と表出する戸惑い。あのシーンに1990年(社会主義の東欧諸国にとって過渡期の真っ只中)の空気が集>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
親愛なるドン・パブロ。
マリオです。忘れてないといいけど。
それはともかくとして、以前おれに言ったこと覚えているかな?
あなたの友達に島の美しいものを言えと。
おれは言えなかった。
だけど今はおれにも>>続きを読む
7人姉妹を演じ分けたノオミ・ラパスを観ているだけで楽しい。惜しみなく身体を張り、がっつりアクションしちゃってるところは流石。
主旋律を担うのは月曜日と木曜日なのだけれど、個人的なツボは典型的理系キャ>>続きを読む
社会の片隅に生きる人々のユーモアとペーソスをヘタウマ調で歌い上げてきたカウリスマキの新境地。
寂れたレストランというお馴染みの舞台で展開される悲喜交々は真骨頂であり、ヴィクストロム(サカリ・クオスマ>>続きを読む
当時のムーヴメントを一から十まで理解できていなくても充分に胸を打たれるであろうエモーショナルな仕上がり。
エリザベス女王の祝典には目もくれずに“青春しちゃってる”パンク野郎三人衆のキャラクターが微笑ま>>続きを読む
スーパーで買った食材を使い、市販のルウで味付けした、なんてことのないごく普通のカレー。ミシュランが星を与えるような手の込んだ一品ではないけれど、誰もが「おいしい」と安心できる家庭の味。愛すべき一皿。>>続きを読む
次から次へと羅列されるソリッドなイメージの数々をボケーっと眺めていればいいのだ。それこそ、テレビに流れているCMを鼻クソほじりながら観る感覚で。
何から何まで語ってくれる独白。
呆れるほど単純な人物>>続きを読む
押井守が実写畑の人間で、尚且つハリウッドのように潤沢な(潤沢すぎるほどの)製作予算に恵まれていたら……。
日本でもこんな高尚なSF超大作が誕生したのかもしれませんね。
ま、ノーラン兄弟も押井も頭の良さ>>続きを読む
"March Comes in Like a Lion"
羽海野チカの大ヒット漫画(と、それを原作とする派生)作品『3月のライオン』について語られることは多くても、矢崎仁司が90年代の初頭に発表した>>続きを読む
例えば、あのお菓子屋と歯のショップをこれ以上にないほど守銭奴的な考え方で経営しているクマの夫妻。
この映画では彼ら(マッチポンプでやりたい放題な資本主義を象徴する某国)のことを類型的な“あくどい商売人>>続きを読む
三種の神器が普及し始めた昭和30年代、とあるサラリーマン家庭にテレビがやってくるまでの悲喜交々、というのが大筋。
笠智衆や杉村春子の立ち位置はいつも通りだし、観客が密かに期待する佐田啓二と久我美子の淡>>続きを読む
この映画は撮影が良くない。戦闘時は工夫が見られてまだマシなのだが、それ以外の場面はまるでダメ。
クロースアップやバストショットはどのカットも収まりが悪く、度重なるスローモーションも効果的とは言えない。>>続きを読む
初めて観たときの感動は、きっと一生忘れられない。
飾り気のないクレジットの後、静かに聴こえてくるカノンの旋律。穏やかに揺蕩う湖面と、色付き始めた木々の葉。美しい風景画のようなオープニングを眺めながら>>続きを読む
シリーズの1作目としては充分な及第点。
オーソドックスな語り口が良い。主要なキャラクターの造形には気が配られており、映画としての娯楽性もキッチリ兼ね備えている。
原作は未読だが、ある程度は過不足なく>>続きを読む
「ビルマ戦線で下士官から『チャンコロ(中国人に対する蔑称)』と呼ばれて本当に悔しかった。確かに我々は血統的には日本人と言えないが、日本を想う心は同じこと。自分は日本人以上の日本人だと信じている」
「>>続きを読む
伊丹作品の中で唯一未見だった映画。
評判が芳しくないということは承知していたが、これほどまで退屈だとは思わなかった。そんな無理にエンタメっぽく仕上げようとしなくていいのに……と感じる箇所が多数。
新>>続きを読む
「なんだよ、今週もドラゴンボール休止なのかよ、ふざけんな!」
「どっちの料理ショーは、放送時間を変更してお送りします」
「野球中継が延長したせいであのドラマ録画できなかったじゃない!」
地上波でナイ>>続きを読む
これは“性”の物語だ。
サソリとカエルの寓話が印象的な性(さが)の物語であり、ファーガスとディルの関係を描いた性(セクシャリティー)の物語。
IRA闘士と英国軍兵士が繰り広げる密室劇から一転、ケレ>>続きを読む
お涙頂戴ドラマの最高峰(←これでも褒めてるよ)。
鉄格子の向こうから「チャンプ?」と呼びかけるリッキー・シュローダーの芝居がヤバい。寺田心の比じゃないあざとさ。
個人的なピークは父子が競技場の観覧>>続きを読む